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No弐-174  言葉のおもしろさ13  

朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は7月31日から8月28日の3回分です。

 

①「光●(●はウ冠の下に左右にコ匚、その下に呆)門」 「光寮門」は間違いだった(7月31日)

  早稲田大学のそばの穴八幡宮の門の額に<光●(●はウ冠の下に左右にコ匚、その下に呆)門>と書いてあるそうです。●(●はウ冠の下に左右にコ匚、その下に呆)は何と読むのでしょう。

・インターネットで調べると「光寮門」となっています。街紹介や神社紹介のページも「光寮門」です。

・漢字の字体を多く載せている字書をいくら見ても「寮」を「●(●はウ冠の下に左右にコ匚、その下に呆)」と書く例が載っていません。

・調べるうちに「松」の字体の一つに「●(●はウ冠の下に左右にコ匚、その下に呆)」に近い字があるのを見つけました。つまり「光松門」です。

・ここの神木の松が光を放ったという伝説もあり、つじつまが合います。

・ネットの大多数の情報は間違いだったのです。  

 

②「唎き酒」 ひとつの単語専用の漢字(8月21日)

 居酒屋の看板に<唎き酒処>と書いてあったそうです。

・辞書では「利き酒」「聞き酒」と表記します。本来は酒のよしあしを鑑定することを言います。

・漢字の「聞」には香りをかぐ意味があります。お香をかいで種類を当てることを「聞香(ぶんこう)」「聞き香」と言い、さらに「聞き茶」「聞き酒」などが派生しました。

・判断が利く意味から「利き酒」とも書きます。

・「唎き酒」はさらに凝っています。口で味わうので「利」に「くちへん」をつけて「唎」としました。

・「唎」は、現在は一般にこの単語としては使わない漢字です。

 

③「動物の連れ込み」 変な連想をする人は古い?(8月28日) 

 東京都内の公園で見た看板で、「この言い方、おかしくないですか」と聞かれるそうです。

・「日本国語大辞典」第2版で「連れ込み」は<愛人を伴って待合や宿屋へ入ること>

・以前は「連れ込み旅館」なる施設もありました。

・作家の永井龍男は1956年の短編「名刺」の中でこの言い方を取り上げています。

 動物園の入り口で看板を見た男が言います。

<犬の連れ込み、お断りだとさ。人間のアベックは自由と言う訳だ>

・今では「連れ込み旅館」も聞かなくなりました。今後、「連れ込み」から変な連想をする人は、古いと思われるようになるでしょう。

 私も変な連想をしてしまいました。古いのかな〜!