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No弐-941  言葉のおもしろさ40

 今日は、朝日新聞別冊「be」に連載されている飯間浩明さんの「街のB級言葉図鑑」からです。毎月紹介してもう40回になるんですね、

 今回は10月7日、14日、21日、28日の4回分からです。

 

① 「倶楽部」 外来語の当て字の傑作(10月7日)

会社の入り口に<倶楽部>の文字が掲げられてあったそうです。

・なぜこの当て字を書くのか。これは「倶(とも)に楽しむ部」という意味を込めている。

・元は英語だが、それに意味を踏まえた漢字を当てている。

・この当て字は明治の中頃にはもう広まっていた。

・1884年の雑誌には「最近、新聞に『倶楽部』という新文字が現れた」という趣旨の指摘が載っている。

・外来語の音を踏まえた当て字は「珈琲」「檸檬」などたくさんある。

・音と意味の両方を踏まえた当て字を作るのはなかなか難しい。

・「カタログ」は「型録」(型を収録したもの)、「コンクリート」は「混凝土」(混ぜて凝らせた土)。

 

② 「自・至」 記号的に使われることば(10月14日)

地下鉄の出口に<通行時間 自6:00 至22:00>と書いてあったそうです。

・何と読むかあまり考えずに使わわれることばを「視覚語」と呼ぶ。(三省堂国語辞典)見るだけで、発音を意識しないから。

・「自」「至」はもともと漢文の言い回しだった。「より」「いたる」。

・<自天子以至於庶人>と言う漢文は「天子より以(もっ)て庶人に至るまで」と読む。「帝王から庶民に至るまで」ということ。

・視覚後の例としては、イベント告知で「於・公民館」などと使う「於」もある。「おいて」とも読めるが、あまり発音は意識しない。「於」も漢文からきている。

・漢文の表現が現代に残り、記号のように使われるのは面白い。

・ひらがなと違い、1文字で意味を表せる漢字の長所が生かされている。

 

③ 「春夏冬二升五合」 1世紀以上前からのクイズ(10月21日)

居酒屋の看板に<春夏冬二升五合>と書いてあったそうです。

・「春夏冬」は秋がないので「あきない」。

・「二升」は升が重なって「ますます」

・「五合」は一升の半分で「半升(はんじょう)」

・「商いますますます繁盛」ということ。

・調べてみるとこのクイズは、1世紀以上前、1890年代の本に出ている。

・「一斗二升五合」 「一斗」は五升の倍。「ご商売ますます繁盛」

・大阪では「大阪城」をつけ足し、「一斗二升五合大阪城」で「ご商売ますます繁盛大繁盛」。

 

④ 「程(いき)」 そう読む例はあったのか(10月28日)

東京タワー内の江戸・東京が発展する映像の中に「粋(いき)」という言葉に多様な漢字が当てられてきたという説明があったそうです。

・「粋」・・「意気」「当世(いき)」「程(いき)」。

・イキだねえ、などと使う「いき」は、本来は「意気」と書いた。当て字ではない。

・「当世」も為永春水の作品に<当世(いき)な裏長屋>と出てくる。

・「程」は「江戸東京学事典」で十数語の「いき」の当て字の中に「程」が示されているが、実例は出ていない。

 

 「春夏冬二升五合」「一斗二升五合大阪城」商売をヒントに、子どもや家族、周囲の人に出題してみてはいかがでしょう。

 

 それでは最後に外来語の「当て字」です。分かりますか?

① 隧道 ②虎列刺 ③曹達 ④瓦斯 ⑤洋琴(ようきん) 

⑤ 三鞭酒 ⑦馴鹿 ⑧仙人掌 ⑨自鳴音 ⑩麦唐納

 

 

 

 

 

① 隧道(トンネル) ②虎列刺(コレラ) ③曹達(ソーダ) ④瓦斯(ガス) 

⑤洋琴(ピアノ) ⑥三鞭酒(シャンパン) ⑦馴鹿(トナカイ) ⑧仙人掌(サボテン) ⑨自鳴音(オルゴール) ⑩麦唐納(マクドナルド)

 手風琴(アコーディオン)、風琴(オルガン)、ヴァイオリンは提琴(ていきん)でした。