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No弐-924 藤井さんお見事八冠達成2

 今日も藤井聡太さんを振り返ります。今年6月に「名人」を獲得し、「No弐-798・799 藤井さんお見事七冠達成」(6月3日・4日)で紹介しました。

 日本経済新聞(4月9日)にあった作家の久間十義さんの記事が印象に残ります。

★聡太と翔平

・彼らの共通項は野球や将棋に一筋であること。

・大谷選手はあれほど魅力的な容姿でコマーシャルに引っ張りだこにもかかわらず、浮いた話は一つも聞かない。

・酒など飲む暇があればひたすら練習。あとは計算された食事(栄養補給)と睡眠。

 

・藤井六冠だって事情は似たり寄ったりだ。棋界の稼ぎ頭なのに「贅沢をしているときは?」と訊かれて、自販機で飲み物を買うときと答えた。

・彼の賞金・対局料は億を超えているのに、発想が可愛いらしすぎる。

・最近では「1カ月休みがあるとすれば、何をしますか?」と問われて、「棋力が衰えるのが怖いので普段どおり将棋に勉強をする」、と返した。

・藤井聡太と大谷翔平は全身全霊を野球や将棋に捧げているから気高いのである。 

 

★藤井さんのエピソード2

・近所の高齢者施設で将棋の相手をしてもらい、「毎日将棋が指せるから、早くおじいちゃんになりたい」

・子供将棋教室に入会時(5歳)に渡された約480ページもの教本を約1年で暗記した。

・「しょうぎのめいじんになりたい」―。6歳の夏、幼稚園の誕生日会のカードに記した。

 

★棋士の声

・「あれだけの実績を重ねながら、藤井さんは棋界において1番か2番の努力をしている。才能と向き合い、磨いている藤井さんを私は尊敬しているんです」(永瀬拓矢前王座)

・「時代における最強格の棋士になる才能を持ちながら研究者の顔を持つ人が絶え間ない訓練を積むから強いんです」(佐藤天彦元名人)

・「どんなに悔しく、辛い結果でも決して将棋から逃げない。最後は気持ちが戻ってくる」「負ける度、その倍で成長する感すらある」「あれだけ直感が鋭いのに、正解は分かっているだろうに、対局では更なる最善手を求めて時間を使う」(師匠・杉本昌隆八段) 

・「藤井さんはAIで強くなったわけではない。実戦の未知の局面、答えの出ない難解な局面で、自分の力だけで考え抜いたその積み重ねで圧倒的な実力を付けたのである」「こうすれば勝てるという対策が見つからない棋士」(谷川浩司17世名人)

 

★「藤井新名人 棋士たちの沈黙に学ぶ」(朝日新聞「社説」)

・ひとつの局面で平均約80通りの可能性があると言われる将棋において、次の一手を選ぶための長考はときに数時間に及ぶ。

・結果を誰のせいにもできない。棋士たちはそんな営みを日々繰り返している。

・一般の日常生活では縁のない、現代社会において異形の行いだ。

・新名人本人も、過去にこう発言した。「将棋は一人で考えて指す孤独な闘いですけれども、それを例えば合議制でやったら強くなるかというと、たぶんそういうことはないんです。一人で考え抜いたからこそできることも、やはり多いと感じます」

・「最善の一手」を求めてひとり黙して考え続けてきた棋士たちに、学ぶべきことがあるのではないか。

・ひとりでじっくりと考える時間を持ち、相手が考える時間も受け入れる。

・活気ある日々を取り戻しつつある今、沈黙の意義にあらためて思いをはせてみたい。

 さて、今回の偉業を称えた昨日の各紙の「見出し」です。

・「藤井 八冠独占」「王座奪取、史上初」「大逆転で『一強』」「緊迫の最終盤 永瀬王座破る」「21歳の偉業 称賛」(読売)

・「藤井 八冠独占」「史上初 王座戦制し達成」「一強揺らぐ気配なし」「藤井八冠 無双21歳」「AI研究と構想力 タイトル戦不敗」(朝日)

・「藤井 八冠独占」「史上初 将棋王座戦制す」「藤井 最強証明」「Ai駆使、通算勝率8割超」「全冠制覇、なお成長途上」「21歳藤井、開く将棋新時代」「経験糧に実力つける」「『強い探求心』で頂点」(日経)

・「藤井 全八冠制覇」「将棋タイトル独占は4人目」「観る将棋ブームに」「AIで可視化 食事も注目」「未知の境地へ夢続く」「少年の『悔し涙』原点」(神奈川)

・「永瀬倒した!!全冠独占」「天下統一 藤井王将」(スポニチ)

 

★藤井さんの強さ

・20年の初タイトル獲得から八冠達成に要した期間は、わずか3年2か月。

・詰め将棋(「詰将棋解答選手権」5連覇)で鍛えた圧倒的な終盤力を武器に早くから逸材の呼び声が高く、読みの速さ、深さ、精度の高さはトッププロの中でも群を抜く。

・プロ入り前から将棋AIを研究に取り入れ、最先端の戦型にも詳しい。

・タイトル戦は2020年の棋聖戦に出場してから、これまで18度すべて勝利。(フルセットになったのは1度だけ) 公式戦では8割超えの勝率。 

 

 藤井さんは、一夜明けたインタビューでこう語ったそうです。

・「勝ったことで(自分に)ご褒美を、とは考えなかった。勝っても負けてもモチベーションを維持することが大事で、逆に負けた時にどう気分を良くするかを考えます」

・「まだまだ伸び代、改善の余地は多い。10代の頃と違って、意識的に取り組んでいかないと棋力を伸ばすのは難しいと思っている」。

 藤井さんを益々応援したくなりました。