今日は、昨日の朝日新聞にあった「授業改善を目的に脈拍などを測定し、児童生徒の学習状況を把握する実証研究」の記事に注目してみました。
脈拍や血流などの情報は「ヘルスケア情報」と呼ぶそうです。
★埼玉県久喜市の中学校の実証研究(2021・2023年度)
〇目的 ①授業改善(教員は授業後や放課後にデータを確認し、授業の進め方と子どもの集中度の関連性などを見て自分の授業を振り返る)
②生徒自身の振り返り(授業の終わりに自身の集中度を確認する)
〇開発 21年度 大手通信会社のグループ会社と初実施。
23年度 ソフトウエア開発の「バイタルDX社」(東京都)
・実証研究の関わる費用は企業側が負担。
〇管理 データはバイタルDX社などの管理下で、個人が特定されない形で2年間保存。
〇事前 保護者に文書で説明→同意。生徒は校長が口頭で説明。(どちらも反対意見なし)
〇方法 生徒の左手首に着けたリストバンド型端末で脈拍を計測し、授業中の「集中度」を測定。
生徒の集中度は教員の端末に即座に反映。
波が上に振れるとリラックス、下に振れると緊張やストレス。
リラックスと緊張が適度に繰り返されている状態が授業に一番集中できている状態。
〇データ分析 教員が話す講義形式の一斉授業では、各生徒の集中度に差がある。
データだけで子どもの状態と授業との関係を判断できない(生徒が授業とは別の事を考えていても集中度が高いとしてグラフに表れることもある)。
〇その他 ・成績の評価や教員の授業評価には利用しない。
・「データを踏まえて授業を改善し、子どものやる気を引き出す課題や学習形態を探りたい。授業を変えていくための一つの指標になりそうだ」(校長)
・「今後は、このデータを校内研修で生かして授業改善につなげていくことは考えられる」(市教委)
★滋賀県東近江市の小学校の実証研究(2022年度)
〇システムのねらい 授業改善と困難を抱える児童の早期発見
〇開発 IT会社「テクノホライゾン」(名古屋市)
〇管理 データは個人が識別できない形でテクノ社の管理下で1年間保存。
〇事前 保護者に説明→同意を得る(一部から不同意)
〇方法 対象4~6年生。児童が持つ端末のカメラを使って、額の血管を流れる血液の勢いや体の動きを測定。
現在の感情を「わくわく」「たいくつ」「そわそわ」「ゆっくり」に4つに分類。
教員の端末に個人の感情の変化が表示。
〇データ分析 感情データに不安定さが見られた児童に悩みがある。
〇課題 ・授業中の教員が端末でリアルタイムにチェックしなければならない。
・児童の顔がカメラに映らなければデータが取得できない。
・教員の負担が大きいので、今年度は採択されず、実証研究は継続しなかった。
・テクノ社は、システムを更新し、希望する自治体と新たな実証研究を開始。
★専門家の声
◎湯浅教授(明治大・情報法)
・取得や利用に当たっては丁寧な説明が求められ、慎重な取り扱いをすべき。
・何でもデータで「見える化」することがよいのか。そこから考える必要がある。
・国が主体となり、ヘルスケア情報の取り扱いについてガイドラインを定める必要がある。
◎小泉広子教授(桜美林大・教育方学)
・子どもの個人的なデータの取得は、そのつど極めて慎重に考えるべき。
◎児美川孝一郎教授(法政大・教育学)
・真に必要なDX(デジタル化)かどうかを見抜く目が、教員にも教育行政にも必要。
・機械に頼ることで、教員の力が育たなくなる恐れもある。
私も何でもデータで「見える化」することがよいとは思いません。子どもの集中度・満足度が子どもの表情や文章から手応えとして分かる先生でありたいですね。
コメントをお書きください