今日は、朝日新聞別冊「be」に連載されている飯間浩明さんの「街のB級言葉図鑑」からです。今回は7月29日、8月5日、26日の3回分です。
① 「ボウリング」 わざわざ彫り直した跡が(7月29日)
長崎市の大浦天主堂に向かう道の傍らに<ボウリング日本発祥地>と書いた石碑があるそうです。
・石碑の「ウ」の文字に注目。いったんは「ボーリング」と彫ってから、溝を埋め、「ウ」に彫り直した跡がある。
・「ボーリング」は普通、地中に穴を掘ることを指すので、わざわざ彫り直したのだろう。
・球技のほうも「ボーリング」と書くことは多い。
・「ボウリング」「ボーリング」は、文字では区別するが、日本語の発音はどちらも「ボーリング」。
・舞踊の「バレエ」と球技の「バレー」も、発音はともに「バレー」。
・カタカナ語を表記するのに、元の言語のつづりや発音の知識が必要なのはまことにやっかい。
② 「ジュエリー」 宝石のことかと思ったが(8月5日)
電車の広告に<ジュエリーの修理><大切なジュエリーを><ジュエリーの事なら>と書かれてあったそうです。
・短文の中で<ジュエリー>と連呼されると、つい注意が向く。
・「ジュエリー」は、指輪やブレスレットなどの装身具。(コウビルド英英辞典)
・多くは貴金属で作り、宝石で飾るものだが、宝石そのものではない。
・以前は「宝飾品」とも「ジュエリー」とも言ったが、20世紀末から「ジュエリー」が増えた。一種の新語。
・現在は「宝石店」「宝飾店」に加え、「ジュエリーショップ」の呼び名も一般化した。
・「ジュエリー」は「宝石」よりも範囲が広く、「宝飾」より現代的なので、愛用されるのだろう。
③ 「ファール」 一般化とともに変化する(8月25日)
球技用グラウンドの近くで<ファールボールに気を付けてください>という注意書きの看板を見たそうです。
・以前、お菓子の「バウム(クーヘン)」を「バーム」という例を扱った。日本語ではauを含む発音が難しいと説明した。
・飛ぶボールは「ファウル」と言うのが元の英語に近い。新聞はこの形が標準だが、一般には「ファール」も多く使われる。
・国語辞典では両方の形を載せている。
・以前「グラウンド」が「グランド」になる例も取り上げた。これもauが苦手なために起こった現象。
・明治時代、野球が好きだった正岡子規は<ファウル>と書いている。
・戦後、プロ野球の人気が高まると、雑誌などで「ファール」の形も多くみられるようになる。
・最初は律義に「ファウル」と言っていても、何度も繰り返すうちにauを避けるようになった。
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