今日は、朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は、7月1日から22日の4回分です。
①「今来る、すぐ来る」 なぜか妙にリズミカル(7月1日)
ハンバーグ店に<店内でのお待ち合わせはお断りしております。今来る、すぐ来るは受け付けておりません>という貼り紙があったそうです。
・小さな店なので、待ち合わされると満杯になってしまう。
・<今来る、すぐ来る>は、なぜか妙にリズミカルなフレーズ。
・きっと待ち合わせをとがめても「ああ、今来ますから」「すぐ来ますから」という客が多いのだろう。店の人のにがにがしい様子が目に浮かぶよう。
・昔から「『足らぬ足らぬ』は工夫が足らぬ」、「『ごめん』ですめば警察はいらない」など発言を織り込んだ標語のようなものはいろいろあった。
②「お立ち止まり」 言えそうであまり言わず(7月8日)
浅草の仲見世に<この場所での ご飲食 お待ち合わせ お立ち止まり ご遠慮ください>という注意書きがあったそうです。
・「お待ち合わせ」は「お待ち合わせの場所」のように普通に言う。
「待ち合わせる」を名詞形にして「お」をつけている。「お問い合わせ」も同様。
・「お立ち止まりはご遠慮を」と言ってもいいはずだが、あまり目にしない。
・受け止める(反応)を「受け止め」と言うのは、21世紀になってからで、最初は違和感があったが定着した。
・なじみの問題。「お立ち止まり」は今のところなじみがないが、観光地がいっそう混雑し、立ち止まり禁止の注意書きが増えてくれば、当たり前の表現になる可能性はある。
③「ヤング」 若い人はどう受け取る?(7月15日)
携帯電話とインターネットサービスの公告に<最強ヤング割>と書いてあったそうです。
・日本語では1970年代に「ナウなヤング」「ナウいヤング」などと使われた後、なんとなくダサく受け取られるようになった。
・80年代の初め中学の年配の先生が冗談で「私も皆さんと同じヤングです」というのを聞いて、「今どきヤングなんて言わないよ」と思ったのを覚えている。
・外来語は普通、新しい印象を与えるが、「ヤング」は例外で、「若者」のほうが現代風。
・明治初期は「新橋駅」を「新橋ステーション」と言ったが、この「ステーション」も、人によっては古い感じがするかもしれない。
・広告では、わざと違和感をねらったネーミングがあるが、<最強ヤング割>もそうだろうか。
④「公告・広告」 類義語について考える(7月22日)
官報販売所に<官報 公告 広告 取次所>という看板があったそうです。
・「広告」も「公告」どちらも「広く知らせること」という点では同じだが、「公告」は、法律に基づいて行われる。
・官報には、会社の「合併公告」、「組織変更公告」などが載っている。
・新製品などの商業広告は、官報には出ていない。
・「商標変更」「本店移転」ほか、法律に基づかないお知らせが、官報の号外にたまに出るが、これが「広告」。
・明治時代は「公告」「広告」の区別は曖昧だった。
・当時の小説には「演説会の公告」と出てくる。今なら「広告」。
・両者がはっきり区別されるようになったのは大正時代から。
・「公告」「広告」は紛らわしい類義語で、変化ミスをしやすい。
コメントをお書きください