今日から夏休みが始まる学校が多いのでしょうね。夏の水泳指導も始まるのかしら?
水泳の授業については、4年前「No377(2019年7月8日)」で「水泳指導の民間委託」を取り上げました。
千葉市が、教員の負担軽減や施設の維持管理コスト削減を目的に、2019年度から水泳の授業を民間のスイミングクラブに委託した例を紹介しました。
神奈川県海老名市は、2011年度ですべての小中学校のプールを全廃し、代わりに市内に3カ所の公共屋内プールを使用するようにしました。
3年前には、「No763(2020年7月28日)」で「水泳授業は不要不急か」というテーマを取り上げました。
教育現場では水泳軽視の傾向が強まり、この20年で全国の学校で約2000のプールがなくなり、教員採用試験でも水泳の実技がなくなりつつあります。
日本の学校にプールが造られたきっかけは、1955年に瀬戸内海で宇高連絡船の紫雲丸が沈没し、修学旅行中の児童生徒100人を含む168人が亡くなった事故がきっかけで、1968年学習指導要領の小学校体育に「水泳」が盛り込まれました。
学校における水泳教育は、近代泳法だけでなく、呼吸の確保や浮く姿勢、川や海での水の違い、着衣泳など多岐にわたっていますが、生活に支障はなく、泳ぎは大人になってからでも覚えることができ、プールの管理、監視で教師の負担が大きいので、水難事故を防ぐ指導や泳ぎに触れる機会を年に数回にし、イベント的にすれば十分という声もありました。
昨年はNo弐-481(2022年7月21日)では、千葉市の小学校の5年生の水泳授業の例や長野市の市営プールの活用例を紹介しました。
「水泳指導の課題」として、①費用、②管理、③評価、④水辺の安全の4点があげられていました。
今年も6月27日(火)の読売新聞に「水泳授業のクラブ委託」が取り上げられました。
・埼玉県上尾市は5月から小中4校で民間委託を試行。全33校中約9割が築30年超。
(試算 プール解体・建て替え費用3億円、30年間民会委託だと約1億円経費削減可)
・千葉県佐倉市は10年前に民間委託を始め、モデルケースになる。
・SCの施設を利用し、インストラクターを活用した小学校(3%)、中学校(1.9%)。
★浜上洋平准教授の話(大阪体育大・体育科教育学)の話
・SCの指導と体育の授業は目的が少し違う。
・SCではインストラクターが丁寧に助言し、泳ぐために「最短距離」となる技術を伝える。
・体育では、子どもが試行錯誤しながら課題をどう乗り越えるか、考える力を技能とともに伸ばす。
・連携するには、このギャップのすり合わせが必要になる。
・泳法のマスターだけではなく、水難事故の際に命を守るための身のこなし方や着衣泳のコツ、呼吸確保を学ぶといった側面も消してはならない要素。
・今後、民間委託がより進むという予測はあるが、泳ぐ環境、学ぶ場所が生まれる点がメリットだが、教員が知識や理論を持たなくてもいいという風潮になっては本末転倒。
・命を守る指導をできる教員がいなくてはならない。
・授業は、教員が主体となってコントロールすべきだろう。
今日の朝日新聞にも「減りゆく学校プール」のことが取り上げられていました。
・学校向けプール製造の最大手「ヤマハ発動機」がプールの開発・製造から撤退すると発表。
・営業活動は来年3月末で終了。納入済みの保守点検は継続。
・学校やレジャー施設向けの「スクールプール」を6581基納入。
・小中高校などのプールは近年、大きく減っている。
屋内・屋外合計31281か所(1990)→24864か所(2021)
★背景
・そもそも学校にプールを備える必要がない。
・小中学校や高校に必要な施設を定めた省令には水泳場についての規定はない。
・学習指導要領では小学校と中学1、2年生で水泳の実技研修が必修とされているが、自校のプールで授業しなければならない決まりはない。
・「適切な水泳場の確保が困難な場合」は座学のみでもよいとされる。
・葛飾区では昨年度から、73校中12校が民間施設で授業実施。今年度は24校。
(試算 屋外プール建設費約2億2000万円、運営経費1校年間234万円、民間施設使用1校年間550万~770万円)
・埼玉県志木市は20年度から民間施設利用開始。昨年度全8校で実施。
・北海道函館市は今年度小学校全39校が水泳の授業中止。
プールのない20校は他の学校で授業する計画が、バスの運転手が確保できず、全校中止にし、座学で対応。
自分の泳力を知ることは大切です。座学では気の毒です。
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