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No弐-813  2023年6月のがるべる

 昨日の第111回定例「6月のがるべる」は、私の豊島区時代の大先輩、桑畑つね子先生が、「今こそ教室で民話を」―耳を傾けることは心を寄せること―というテーマでお話をしてくださいました。

 

1. 自己紹介

・退職して20年、現在は板橋区の小学校で週1回火曜日に読み聞かせをしている。 

・特に民話の語りを中心にしている。

 

2. 民話との出会い

・教員に成りたての頃、大川悦生さんの講演を聞き、民話の魅力に気づき、自分の故郷を見直すきっかけにもなる。

・「民話を語る会」に入り、各家庭を訪問し、昔話を聞く機会を持つ。

・一つ一つの言葉が新鮮に聞こえた。

 

★民話って何?

・「むかしむかし、あるところに」で始まるのが「昔話」。 

・いまでも場所や、ものが残っているような地名や人の名が残っている話が「伝説」。

・村むらで語られてきた話が「世間話」。

・こうした語り全部をひっくるめて「民話」という。

 

3.地方採訪の旅(S42~48年頃) 

・聞き手がいなくなることで、急速にお年寄りの語り手が少なくなっていった。

・取材には、すげ傘をかぶり、テープレコーダー、カメラを詰めこみ、2人1組で季節ごとに村々を訪ね歩いた。

・囲炉裏端で聴いた11人の子どもを持ったおばあちゃんの話。お産は過酷なもの、そこから語り継がれている話が数々ある。

・宿に帰ると情報交換し、語り合い、東京に帰ると、テープを起こして、民話の会で発表し合った。

 

4. 子どもたちに語る

・聞いてきた話を教室の子どもたちに語っていた。一番よく語ったのは鳥の話。

・「とりのみじさ」。おじいさんが、ふしぎな鳥をのみこむと、おなかの中から美しい鳴き声が 聞こえてくるお話。

・あやチュウチュウ こやチュウチュウ ごよのたからを 食べて申そう ピッピパラリーン。

・子どもは擬音からすぐに覚えていく。

・勉強が飽きてきた時や4時間目の給食前に「お話ひろば」に集めて聞かせた。

・怖い話を聞かせたこともある。

・お話を嫌いな子どもはいない。やりようでどのようにでもできる。

・聞いていない子には話しかけたりした。

 

★年に1回の「読み聞かせスペシャル」(1年~6年生)

・面白くない話は聞かない。話を聞くことはエネルギーがいる。

・大きな絵を使ったり、音楽(フルート、ピアノ)を入れたりした。

・不必要な抑揚や演出は不要という声があるが、自由でいいと考える。

・あらすじは同じでも、その人の地方の方言や表現の仕方、思いや語り口で違ってきていい。

 

・コロナで集まって読み聞かせることができなくなった。

・大きなスクリーンに映すとやりやすいが、子どもたちには見えにくくても生の絵を見せてあげたい。

 

5. 民話の世界・民話の心

・民話は愛の話である。(どの話にも底流には、やさしさや知恵、たくましさが流れている)話す人と聞く人との交流がある。語りの約束があり、擬音の面白さがある。

(1) 語りの約束

・語りはじめ(とんとむかしのはなしなど)、語りおさめ(とっとんぱらりのぷーなど)、合いの手(さんすけなど)がある。

 

(2)  擬音の面白さ(桃太郎 ドンブラッココー ズッコッコと桃が流れて来るなど)

 

「へっぷりよめさま」(松谷みよ子)は、実際に語って下さり、「びんぼう神とふくの神」(松谷みよ子)も紹介してくださいました。

 

(3)  民話の世界 ①美しい心とやさしい思いやりのこもった話 ②欲深い人が損をして正直な人が幸せになる話 ③動物や鳥たちの話 ④不幸や災難に負けないで幸せをつかんだ話 ⑤とんち話、あわて者、不精者がみんなを笑わせる話 ⑥知恵を働かせていろいろな危険を切り抜ける話 (先生の資料から)

 

★先生からの助言

・「語る」は大事。先生の体験談を語るといい。得意なことや昔話は子どもたちは好き。

・読み聞かせる時は、3回声を出して読んでみてからやった方がよい。

・自分の中に何を伝えたいか?どこが伝えたいか?があってこそ伝わる。子どもは敏感。

・いい絵を選ぶ。

・子どもは耳から発達する。いい話をたくさん聞き、イメージを膨らませることが大事。

 

★参加者の声

・「話す」と「語る」は違うことが分かった。

・「ながら聴き」が多く、じっくり聞く、耳を傾ける、ジワーッと心が温かくなるような体験をさせてあげたい。もう少し長く触れる機会があればいいなとあらためて思った。

・子どもたちは読んでもらうのは好き。感情を込めながら話ができるようにしたい。劇の中でも語れるように指導できたらいい。

・聞かせるのは何よりも大事。どの教科でもどの単元でもできるようになると、子どもたちに伝わっていくことが分かった。

・紙芝居は楽しかった。絵が小さいからこそじっと見つめていた。快適にやるのではなくて、位置を変えたりしながらやることが必要なんだと分かった。

・惹きこまれた。小2の息子に再び読み聞かせをしてあげようと思った。

・民話を聞くだけで自分が経験したことのない世界を想像して、想像することで人の気持ちが分かる子になれるのではないかと感じた。

・英語やプロミング、デジタルばかりが目に行きがちだが、読み聞かせに親しんだ子はいじめなんかしないと思った。

 

 四ツ谷の会場に9人集まりました。あっという間の2時間半でした。来月は7月29日を予定してます。空けておいて下さいね。