読売新聞には、「情報偏食 ゆがむ認知」という記事が連載されています。
第3部は、「揺れる教育現場」(5月29日~6月5日)に焦点を当て、5回に渡って連載されていました。
・社会のデジタル化は、子どもたちの成長にも影響を及ぼす。
・インターネット上にあふれる真偽ない交ぜの情報に無防備なまま接すると、思考や想像力、判断する力が侵されかねない。
・「チャットGPT」に代表される生成AI(人工知能)の台頭も、「学び」を変容させる可能性をはらむ。
今日は、1回目(5月29日)の記事に注目しました。
①「都市伝説」を妄信し、検索に夢中になって影響が出た少年
根拠が曖昧・不明な「都市伝説」を発信する動画投稿サイトのとりこになり、影響が出てしまった千葉県の小学5年の男子児童の話からです。
・今年1月、学校の給食にバナナが出た時、少年は「バナナを320本食べると、死んじゃうんだよ」と大声を上げた。同級生の反応に誇らしく思った。
・少年は、小学3年の頃からオンラインの戦闘ゲームに夢中。
・攻略法を指南するサイト上の動画には「人は死んだらどうなるのか」といったタイトルのものばかり。
・ゲームでは、攻撃されても血も出ず、パタッと倒れるだけ。
・次々に「おすすめ」動画を見ているうち、「死」を現実のものとして意識するようになる。
・「致死量」をまとめたという動画に目がくぎ付けになる。
・同じことを伝える動画を何本も見た少年は「本当のことだ」と信じて疑わない。
・同級生の注目が最初だけで、すぐに意識しなくなることが気に入らない。
・興味をひく新しい情報を探し、平日2時間、休日は6時間もスマホにかじりつく。
・最近、言葉遣いが乱暴になり、学校では同級生に、軽々しく「死ね」と口にする。
・「エスカレートして友達をいじめたり、自殺願望を持つようになったら・・・」。母親の心配は増す。
②ユーチューバーの動画に染まり、影響が出た少年
次は、ユーチューバーの動画に染まり、授業にも影響が出た滋賀県の小学4年(昨年度)の男子児童の話からです。
・クラスの中でも控えめな方だった少年が変わったのは、夏休み明け。
・夏休み中、一人で家で過ごす時間が長く、その間に見続けたユーチューバーの動画に染まる。
・授業中にも端末を見続け、同級生にクイズを出すようになる。
・最初は「路面電車が走る都道府県はいくつあるでしょうか」が、やがて小学校では習わない数学や理科の問題へと進んだ。
・ある日の授業中、少年は世界史の問題を女性教員(20代)にぶつけてきた。
・タレントユーチューバーの語り口、大げさな手ぶりとしぐさまでそっくりだった。
・女性教員が教科書を開くよう注意すると、彼は一方的に正解を言い、ふんぞり返って言った。「先生なのに知らんの?」。
・女性教員は彼の出す問題を受け流していたが、しばらくすると他の児童たちも「先生って何も知らないんや」と言うようになった。
・提出物を出すよう言っても、整列を指示しても、反応しなくなった。
・「ネットに強く影響を受けた子に、教師としてできることはなんだったんだろう」。女性教員は思い悩む。
・埼玉県戸田市の小学校の5年生の特別授業で「カモノハシの赤ちゃんの画像」を探すと、半数超の20人は、海外アーティストが作った精巧な彫刻作品の画像にたどり着いた。
画像は第三者が、「カモノハシの赤ちゃん」としてSNS上で拡散した結果、サイトのアルゴリズム(計算手順)によって上位に表示されるようになった。
・ネットの世界は、正確さより関心(アテンション)を集めることが優先される「アテンション・エコノミー」の原理で動く。
・閲覧履歴などを基に利用者が好む情報が「おすすめ」として押し寄せ、偏った情報ばかりに包まれるという危険が潜む。
★加納寛子准教授(山形大・情報教育学)の話
・社会経験が少ない子どもは特に(ネットの)影響を受けやすい。
・サイトの言い回しなどに感化され、粗暴な振る舞いにつながることもある。
★秋光恵子教授(兵庫教育大・学校心理学)の話
・知識や考えを主張する子どもは以前からいたが、ネットの普及で、その内容が偏向したり過激化したりしている。
・周りの子どもが感化されないよう、当人だけでなく教室全体で問題点を考えるようにする必要がある。
昨日、映画「怪物」を観てきました。今日のこの2人を主人公にした映画の脚本が目に浮かびます。
「人は誰でも自分の中に1匹の『怪物』を飼っている」としたら、どうこの「怪物」と対峙していったらいいだろう?なんてさっきから悶々と考えてます。
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