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No弐-793  言葉のおもしろさ35 

 今日は、朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は、5月6日から27日の4回分です。

①「耐」 生産力の高い「造語成分」(5月6日)

 スマホの販売店で画面をコーティングするサービスの広告に<耐キズ 耐衝撃・・・>と書いてあるのを見かけたそうです。

・「耐キズ」は、傷に耐えるという意味だが、「傷」を音読して「耐傷(たいしょう)」とするのではなく、「きず」と訓読みしたところがポイント。

・漢字の熟語は、音読みでそろえるのが多数派。「耐水」「耐熱」「耐震」

・「耐」と言う字には自由な性質がある。

・「耐ストレス」のようにカタカナと結びつく。

・塗装用語では「耐引っかき性」(引っかきに耐える)という変わった言い方がある。

・「耐」のように、他のことばと合わさって熟語を作る要素のことを「造語成分」という。

・「耐」はわりあい生産力の高い造語成分である。

・SNSでは<耐痛み中>(痛みに耐えている最中)と書いている人もいた。

 

②「迷惑行為」 注意書きで最強の表現?(5月13日)

 市街地のビルに<お願い 迷惑行為はお止めください>という注意書きのプレートが掲げられていたそうです。

・多くの注意書きは、禁止事項を列挙している。

・公園に行くと「火気厳禁」「バイク乗り入れ禁止」「投球禁止」など、何項目も並べた立札がある。

・ところが、禁止事項に「迷惑行為」としか書いてなかったら?急に不安になる。

・責任者の狙いはこれだろうか。具体的に書かないことで、人々の自覚を促している。

・あらゆる迷惑行為を禁ずるこの表現こそ、注意書きとして最強なのかもしれない。

 

③「事」 駅構内にある奇妙な表示(5月20日)

 八戸駅の新幹線ホームで「事」という1文字だけの表示があったそうです。

・これは「事業用の列車の停止位置目標」

・線路の維持管理や乗務員の訓練がこの位置を目標に停まる。

・停止位置目標の表示には他にもいろいろ種類がある。

・「試」試験車両が停まるときの目標。

・東京メトロのホームでは「無」という電光表示を見かける。車両のドアが開閉時に、駅員の立ち会いがないこと。

 

④「有人レジ」 当たり前ではなくなった(5月27日)

 駅の近くで<有人レジ>という表示を見たそうです。

・今やレジが有人なのは当たり前でなくなった。

・新しいものが生まれたとき、区別のため、従来のものの名前を変えることがある。これを「レトロニム」と言う。

・「有人レジ」は「無人レジ」を踏まえたレトロニム。

・デジタルカメラの誕生後、従来のカメラは「アナログカメラ」「フィルムカメラ」と言う。

・携帯電話に対し、従来の電話を「固定電話」「家電」と言う。

・朝日新聞でも2002年に、米国で増える無人レジを紹介する記事の中で、臨時的な用語として「有人レジ」を使っている。

・将来は「レジ」と言えばセルフレジで、従来のレジは「有人レジ」と呼ぶのが普通になるかもしれない。

 

 店員が 手とり足とり セルフレジ、居酒屋の注文はアイパッド、なんかなー。