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No弐-783  工藤公康さんから学ぶ

 プロ野球ソフトバンクの前監督で、西武、福岡ダイエー、巨人、横浜の4球団の投手として活躍した工藤公康さんはよくご存知かと思います。

 4月27日(水)朝日新聞「interview スポーツ✕学び」は工藤さんの記事でした。

「大学院も農業も 知れば自分を変えられる」という見出しが目に留まりました。

 

★生い立ち

・複雑な家庭。両親が離婚して元々のきょうだいと異母きょうだいと生活する環境。

・実父は頑固で厳しく、自分の思う通りにならないとすぐに怒る。

・勉強はできず、授業中はあてられないように下を向いていた。

・ランドセルや靴、洋服は兄のお下がり。物を買ってもらった記憶がない。

 

★野球を続けるきっかけ

・野球経験者の用務員さんが「君の球なら推薦で高校に行ける」と紹介してくれた。人との出会いが救ってくれた。

 

★考えたり、工夫したりする原点

・高校2年の時、愛知大会で四球、押し出し、ボーク、悪送球の全てをやって負けた。

・制球をよくするためにはどうやったらいいか、悩みに悩んだ。

・足りないものを痛感し、何をするべきか模索した。

 

★ソフトボール指導者のアドバイス

・「なぜ、そんなに離れて投げる。もっと近づいてみろ」。

・10mぐらいの距離から投げ始めた。10級連続ストライクで1歩下がることを繰り返していくうちに制球力が磨かれた。

・常識的な考え方をする必要がないことを教わった。

・事象をもっと簡単に考えなさいと言われているようにも捉えられた。

・学んで知ることで、変わる面白さが分かった。

 

★課題を知る

・大学院に提出するTOEIC(英語能力テスト)を受けた時、4択問題なのにわからないところは空白で出した。

・1点でも高い点を取るためには空白にせず、選択すればよいのに、それだと今後勉強してどれだけ上がったかが分からなくなる。今の実力を知りたい。

・今できていないことは何か。点数を稼ぐよりも、それを知ることの方が大切だという意識が強くある。

 

★大学院進学

・スポーツから離れないが、学び直すことで自身を変えられないか、選択肢の中に大学院があった。

・現役を引退した後、2014年に、トレーニングなどの指導を受けていた筑波大学大学院大に進学。

・野球選手の「故障予防」が研究テーマ。

・子供達の肩・ひじ検診に携わり全校を巡ると、肩やひじを痛めて悩んだり、手術したりする子供たちの多さに驚く。

・肩・ひじ検診の必要性を全国に広め、できれば検診で故障が見つかる前の予防もできないか、を研究していきたいと考えた。

 

★研究

・スポーツ整形外科の医師らと一緒に京都や徳島へ足を運ぶ。

・検診会場では、しゃがみこみ、直接、子供の声に耳を傾ける。

・年100試合以上酷使して投げている子供もいた。

・野球ができなくなってしまう子もいると聞いてショックを受けた。

 

★両立

・2015年(2年目)、ソフトバンク監督に就任要請を受けた。

・一時、大学院は休学したが、球団の許可を得て在任中に復学。

・監督業との両立で資料を集め参考文献を読み、データ解析や統計などを出して修士論文を書き上げる。

・シーズン中は練習を見て試合に入り、帰宅。

・最優先事項を決めて時間を管理し、根気よく1個ずつ進める。

・これをルーティンにすれば1日の流れができるので、大変とかつらいはなかった。

・球場の監督室で選手やコーチ陣とのコミュニケーションを取り、帰宅後は論文の整理や資料各種をそろえるなどの時間に充てた。

 

★博士号へ

・修士号を得て、今度は博士課程に進み研究を進化させる。

・21年限りで監督を退任したことで、本来のやりたかった研究に専念できる。

・博士号は英文を含む3つの論文が必要で、学会で発表して取得できる。

・投球フォームの改善などで、肩・ひじの故障予防の方法がないかを考えることが最終形態。

・負担のかからない投げ方のエクササイズやドリルを紹介できれば。

 

★新たな学びを求めて

・勝負の世界から離れて1年半。新たな学びを求めて日々を忙しく動き回る。

・農業を始めた長男の有機野菜の栽培や手入れを手伝う。ニンニクの種植えをして育てる。

・畑近くの廃校になった小学校の教室を事務所に改造。やってみたかった日曜大工、DIYにも取り組む。

・家の構造を覚えたら、丸太を切って一から家を建ててみたい。

・プロゴルファーの長女とは、NHKのキャンプの番組で共演。

・冬のキャンプが好き。静かだし無になれる。俗世間から解放されて火を見ているだけで幸せな気分になれる。

 

 興味の赴くままに新しい環境へと飛び込む意欲が止まらない。とってもとっても刺激的で魅力的な人でした。