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No弐-781 かわいい

 5月6日(土)朝日新聞の「耕論」は、「『かわいい』って」でした。皆さんは、最近「かわいい」と声をかけたことがありますか?

 今日は、3人の中の1人の児童文学者の村瀬学さんの話に注目してみます。

「魔法の肯定言葉 批判摘む」

 

★まるいこと

・人間の子どもも、イヌやネコ、ライオン、クマの子どもを見ると「かわいい」と感じる。

・それは、動物の戦略として、かわいく見える幼体で生まれるから。

・かわいく見える形とは柔らかみがあり、「小さくてまるいこと」。

・人間の赤ちゃんもまるくころころしている。

・まるい顔は、仏像の顔もそうだが、私たちにはなじみ深く、ぬいぐるみやご当地キャラクターはこのまるさを強調している。

・かわいさと丸顔の結びつきをよく知る手塚治虫は、まるい顔をまず描かせ、その中に目や口を書き込みなさないと教えた。

 

・「かわいい」という表現には、一般的な使い方では捉えられない重みと深みがある。

★大きなものを小さくする文化

・日本庭園は、有限な庭という空間に、山や川、池など無限な自然を配置する。

・盆栽や生け花も、ひな人形も、俳句や短歌もミニチュアにする文化の中で位置づけることができる。

・小さくする文化は、今でいう「かわいい」を演出する仕掛けだった、と考える。

・小さくして身近に置くことは、「恐ろしいもの」を「かわいさ」で緩和する知恵だった。

 

★埴輪

・古墳の周りを囲む埴輪。魔除けなどの目的で、武人や男女、馬や牛などの動物をかたどった小さい素焼きの土器が並べてある。

・埴輪の「かわいさ」は最も不可知な現象である「死」の恐怖を和らげる働きもした。

 

★「かわいい」の広がり

・近年、日本のカルチャーを表現する言葉として欧州にも広がる。

・「きもカワイイ」「ぶさカワイイ」などの派生語も生まれ、対象も広がった。

 

★あいさつ化

・「かわいい」は、軽い肯定の言葉として、あいさつ化していることに注目。

・哲学者オルテガの言葉「なぜ人間にあいさつを交わす習慣が根付いたのか?」―未知の人間同志の攻撃性を弱める行為だから。内容より形式に意味がある。

 

★魔法の言葉

・出会った相手の持ち物、バッグでもめがねでも「かわいい」というほめ方でよく反応する。

・なぜそう思うかに深い意味はなく、相手を悪い気にはさせない魔法の言葉として広がっていることに意味がある。

・万一に備え、あらかじめ批判や攻撃の芽を摘んでから相手と向き合う知恵があるのではないか。

 かわいいって思う時、心がとっても安らぎますよね。