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No弐-768 体の声を聴く

 4月30日(日)読売新聞「広角 多角」にあった「地に足を着け 体の声を聴く」の見出しが目に留まりました。この記事を書いた人は、山口博弥さん(編集委員)。

 

★体の部位で表現する慣用句

・「感情の動き」肩を落とす。胸がすく。はらわたが煮えくりかえる。へそを曲げる・・・。

・「思考」腹に落ちる(深く納得する)

・「人格や性格」肝が据わる(度胸がある)

 

★西洋と東洋の「心と体」のとらえ方の違い

・「西洋」 「心身二元論」心(精神、魂)と肉体を別のものととらえる。

・「東洋」 「心身一元論」心と体は切り離せないものと考える。

 

★「禅」の考え方

・「座禅の基本」①調身 ②調息 ③調心 まず姿勢を整え、呼吸を整え、心を整える。

・禅では「身心一如」のように「身心」と書く。体と心は一つで「体」が先。

 

・東洋の知恵は近年、欧米の医療や教育、ビジネスなどの各分野で積極的に導入されてきた。

★「マインドフルネス」

・心の病や慢性の痛みなどの治療に活用されている。

・静かに座る。自分の呼吸に注意を向ける。体の微細な感覚を観察する。

・「今ここ」にある体への気づきを深めることで、やがては自分の感情や思考をも、第三者の目のように客観的に見つめられるようになる。

 

★メタ認知

・<認知を認知する>概念。心理学用語。

・うつ病の人は、落ち込んだ気分や悲しみ、自責の念などにとらわれ、「視野狭窄状態」にはまりこんで症状が悪化してしまう。

・うつ病の人に限らず、忙しくストレスが強い状況では、つい「視野狭窄状態」に陥り、「メタ認知」も失いがち。

・「今、落ち込んでいるんだね」と少し距離を取って見つめることができれば、ネガティブな感情や認知が増幅するのを止めることができる。

・それには体からアプローチする。

 

昨年No弐-574(2022年10月22日)「コンパッション」で「GRACE」のことを取り上げたのを思い出しました。 

★GRACE

・米国で開発された医療者の燃え尽き防止プログラム。

・「マインドフルネス」と「コンパッション」をベースにしている。

◎GRACEのステップ

 G Gathering attention 注意を集中させる

 R  Recalling intention 動機と意図を想い起こす

 A  Attunement to self/other 自己と他者の思考・感情・感覚に気付きを向ける

 C  Considering what will serve 何が役立つかを熟慮する

 E  Engaging and Ending 行動を起こし、終結させる

 

 山口さんは今月京都で開かれた「GRACE」の研修会にオンラインで参加したそうです。

・印象深かったのは、徹底して「体」を重視。各演者が講義する前には、必ず「グラウンディング」と呼ばれる動作を全員で行う。

★「グラウンディング」

・立って、足の裏と床が接する感覚に注意を向ける。

・背中側をしっかりと、おなかのある前側は逆に柔らかい状態にして、姿勢を整える。

・そのまま、呼吸と体の感覚に気づく。

・地面に支えられた安心感を得て、ありのままの自分の状態に気づき、臨機応変に行動できるようになる。

・「目の前の患者にできる最善のことは何か」を考える時も、単に頭だけではなく、その時に生じる「もやもやした感じ」などの身体感覚にも注意を向ける(体の声を聴く)。

 

★地に足を着け、体の声を聴く

・ネットの世界では今、利用者の関心を引いて広告収入を増やそうとする「アテンション・エコノミー」の原理で動き、刺激的な情報ばかりであふれている。

・「チャットGPT」も誤情報の発信や個人情報の漏えいなど、多くの懸念が拭えない。

・そんな今だからこそ、膨大な情報に振り回されることなく、「地に足を着けて」体の声を聴き、冷静に物事を見る「メタ認知」の力を育てたい。

 

 いかがでしたか?早速体の声聴いてみてください。

 私は山口さんの話にとっても共感しました。