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No弐-754 浪人を考える1

  先週4月15日(土)朝日新聞「耕論」のテーマは、「『浪人』は消える?」でした。

・浪人を経験してから大学に進学する人は、今や少数派になった。

・テレビドラマにいた「浪人役」も最近は見かけない。

 確かに、教え子からも浪人中という話を聞く機会も少なくなり、時代劇でも浪人侍を見なくなりましたよね。

 今日は、「教育社会学」の立場から竹内洋名誉教授(関西大・京都大)の話を紹介します。

★浪人減少の背景

①18歳人口の減少 ②入試方法の多様化(推薦や総合型入試など) 

③日本特有の能力選抜方法が社会構造の変化で揺らいできた。

 

★日本の受験競争

・大学が小刻みな偏差値ごとに最難関まで隙間なく「傾斜的」に並んでいて、努力すればすこし上の偏差値の学校に届くように設定。

・高校受験に失敗したり、途中で低下したりしても、努力次第で進学機会が得られる。

・トーナメント型ではなく、「リターンマッチ」の機会が埋め込まれている。

・大学の一般入試では、出身校のランクや学校の成績などそれまでの実績はほとんど問われない。

 

★平成以降の社会の変化

・平成以降、中産階級は細り、格差が広がった。

・勝ち組も負け組も生まれた家(親)で決まるという「親ガチャ」が言われ、リターンマッチが難しいと思ってしまう社会になってきた。

・日本型選抜の妙味が形骸化しつつあるように見える。

 

★「(受験)浪人」と言う用語の由来

・きっかけは、大正末期から昭和にかけ、旧制高校卒業生が急増して、帝国大学や官立大学に入学できないものが増えた。

・旧制高校生は、白い線が入った帽子をかぶっていたので「白線浪人」と言われ、やがて「白線」がとれ、「浪人」という一般用語となった。

 

★浪人が消える日

・いずれ「浪人が消える日」が来るかもしれない。

・浪人する人がいなくなるのではなく、浪人という言葉が死語になる日が到来。

・リスキングなどで、多くの社会人が大学に入り直す時が来た時、死語になる。

・キャンパスに色々な年齢の学生が行き交えば、「浪人」という概念自体が相対化され、言葉も消えていくだろう。  明日につづく