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No弐-751 させていただく

 先週土曜日の朝日新聞別冊「be」、「サザエさんをさがして」は、「させていただく」(敬意を払う「魔法の言葉」からです。

 皆さんは、最近、「~させていただきます」と使ったことはありますか?  

・昨今、芸能人カップルが「お付き合いさせていただいています」とほおを赤らめる。

・政治家は問題発言を「撤回させていただきます」と臆面もなく釈明する。

 

★敬意漸減

・敬語には、よく使われるほど敬意がすり減る「敬意漸減」の宿命がある。

・「いたします」は自分の好意をへりくだる言い方だったが、偉そうに聞こえるようになり、今や儀式の宣言に使う程度。

・自分の行為を示す敬語に敬意が足りないと思った時、「させていただく」を添えれば簡単に補える。

 

★椎名美智教授(法政大・言語学)の話

・万能かつ便利なので、「させていただく」は現代人にとっての〝マジックワード〟でしょう。

・最新の用法はサウナ好きの女性タレントが発した「しっかり整わせていただきました」だと思う。

敬意を示す相手は不要で、自分がいかに丁寧に話せるかを示すために敬意をてんこ盛り。

・不特定多数が相手のSNS時代、他者への配慮の心を砕かねばならない。

・まさに言葉は「生き物」なんです。

 

 するとタイムリーなことに、昨日の読売新聞「広角多角」に、森川暁子さん(編集委員)の「『させていただく』使いどころは?」がありました。

・最近気になってしまうのが「させていただく」。

・古くからある言葉だが、使用が増えたのは1990年代だとか。

・簡単にへりくだり表現が作れて、なしでは暮らせないほど日々見聞きする。

・多用しすぎて慇懃(いんぎん)無礼に響いたり、違和感のある使い方に出くわしたりする。

・どんな言葉も多いと耳につく。連発はやめようと思っている。

・正解はマニュアルではなく、相手と自分の中にある。そこが難しく、面白い。

 

★「させていただく」(2007年文化審議会答申「敬語の指針」)

・何かを「㋐相手や第三者の許可を受けて行い」「㋑そのことで恩恵を受ける」という事実や気持ちのある場合に使われる。

・㋐㋑の条件を満たしていなくても、満たしているかのように見立てて使う用法もある。

 

★「させていただく」違和感の少なかった例文(椎名教授の意識調査、10~80代約700人、2016)

・では、ご契約の内容について説明させていただきます。

・お言葉に甘えて、会議室を使わせていただきます。

・微力ながら応援させていただきます。

・セール期間中ですので、全品5%の値引きをさせていただきます。

・誠に申し訳ございませんが、今回はカードの発行を見送らせていただきます。

・素晴らしい演技に感動させていただきました。

・エッセイコンテストで受賞させていただきました。 

 

 私は「感動させていただきました」は違和感を感じます。

 「受賞させていただきました」はいかがですか?

 「結婚させていただきます」「警察へ通報させていただく」・・・万能ではないということを意識して、自分の言葉遣いをふり返ってみることが大事なんでしょうね。