先週土曜日の朝日新聞別冊「be」、「サザエさんをさがして」は、「させていただく」(敬意を払う「魔法の言葉」からです。
皆さんは、最近、「~させていただきます」と使ったことはありますか?
・昨今、芸能人カップルが「お付き合いさせていただいています」とほおを赤らめる。
・政治家は問題発言を「撤回させていただきます」と臆面もなく釈明する。
★敬意漸減
・敬語には、よく使われるほど敬意がすり減る「敬意漸減」の宿命がある。
・「いたします」は自分の好意をへりくだる言い方だったが、偉そうに聞こえるようになり、今や儀式の宣言に使う程度。
・自分の行為を示す敬語に敬意が足りないと思った時、「させていただく」を添えれば簡単に補える。
★椎名美智教授(法政大・言語学)の話
・万能かつ便利なので、「させていただく」は現代人にとっての〝マジックワード〟でしょう。
・最新の用法はサウナ好きの女性タレントが発した「しっかり整わせていただきました」だと思う。
敬意を示す相手は不要で、自分がいかに丁寧に話せるかを示すために敬意をてんこ盛り。
・不特定多数が相手のSNS時代、他者への配慮の心を砕かねばならない。
・まさに言葉は「生き物」なんです。
するとタイムリーなことに、昨日の読売新聞「広角多角」に、森川暁子さん(編集委員)の「『させていただく』使いどころは?」がありました。
・最近気になってしまうのが「させていただく」。
・古くからある言葉だが、使用が増えたのは1990年代だとか。
・簡単にへりくだり表現が作れて、なしでは暮らせないほど日々見聞きする。
・多用しすぎて慇懃(いんぎん)無礼に響いたり、違和感のある使い方に出くわしたりする。
・どんな言葉も多いと耳につく。連発はやめようと思っている。
・正解はマニュアルではなく、相手と自分の中にある。そこが難しく、面白い。
★「させていただく」(2007年文化審議会答申「敬語の指針」)
・何かを「㋐相手や第三者の許可を受けて行い」「㋑そのことで恩恵を受ける」という事実や気持ちのある場合に使われる。
・㋐㋑の条件を満たしていなくても、満たしているかのように見立てて使う用法もある。
★「させていただく」違和感の少なかった例文(椎名教授の意識調査、10~80代約700人、2016)
・では、ご契約の内容について説明させていただきます。
・お言葉に甘えて、会議室を使わせていただきます。
・微力ながら応援させていただきます。
・セール期間中ですので、全品5%の値引きをさせていただきます。
・誠に申し訳ございませんが、今回はカードの発行を見送らせていただきます。
・素晴らしい演技に感動させていただきました。
・エッセイコンテストで受賞させていただきました。
私は「感動させていただきました」は違和感を感じます。
「受賞させていただきました」はいかがですか?
「結婚させていただきます」「警察へ通報させていただく」・・・万能ではないということを意識して、自分の言葉遣いをふり返ってみることが大事なんでしょうね。
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