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No弐-655 教員の心の病4

 昨年末12月27日、2021年度(昨年度)に1か月以上休んだ教員が1万人を超え、過去最多となったことが文科省の人事行政状況調査で分かりました。

 教員の心の病については、4年前からNo199(2019年1月11日)、No583(2020年1月30日)、No911(2020年12月23日)で取り上げてきました。 

 

★各紙の見出し

「読売」・休職・休養教員最多1万人 ・「心の病」若手ほど割合高く 

「朝日」・教員「心の病」コロナ響く ・昨年度休職急増 最多の5897人に ・トラブル続く教室 人手なく孤立 ・感染対策やオンライン 多忙に拍車

「神奈川」・精神疾患で休職最多 ・教員5897人、コロナ影響か

「日経」・教員休職「心の病」最多に ・昨年度、公立校5897人

 

★調査結果

・21年度に精神疾患で休職した教員は5897人(前年度比694人増)、全教員の0.64%(156人に1人)。過去最多更新。5000人を上回るのは5年連続。

・これに1か月以上の病気休暇取得者を加えると1万944人。(前年度比1448人増) 初めての1万人超え。

・若手ほど精神疾患による休職の割合が高い傾向。

・赴任から2年未満の休職が目立つ。

 

★世代別

・1か月以上休んだ20代教員2794人(同年代に占める割合1.87%、前年度比0.44ポイント増)年代別では割合は最多。

・30代教員2859人(1.36%、同0.14ポイント増)

・40代教員2437人(1.27%、同0.15ポイント増)

・50代以上2854人(0.92%、同0.08ポイント増)

 

◎精神疾患休職者 

 年代別 20代1164人、30代1617人、40代1478人、50代以上1638人

 男女別 女性3491人、男性2406人 

 学校種別 小学校2937人、中学校1415人、高校742人、特別支援学校772人

 復職者2473人、休職継続中2283人、退職者1141人

 

★若手が増えている背景

・業務量が一部に偏ったり、コロナ禍で教職員間のコミュニケーションが取りづらくなったりしている。

・若手の相談相手になってきた40代の中堅が、採用数が少なくなったため層が薄く、悩みを抱える20~30代を支えるのが難しくなっている。(文科省担当者)

 

★関東地方の公立小に勤める30代前半の女性教諭の例

・今年度、暴力をふるう子や授業中に座っていられない子が少なくないために担任が対応に苦慮していた学年を引き継ぐ。

・目を離せばケンカやトラブルが起きた。

・休み時間も教室を離れられなかった。

・下校後は行事の準備や事務作業に追われ、退勤は毎日午後10時ごろになった。

・ある朝、支度を終え、出勤しようとしたが、体が全く動かず、涙が止まらない。

・病院に行くと精神疾患の診断を受け、当面休職することになった。

 

★教員の心の病が増える背景

・どの学校もマンパワー不足で余裕がなく職場がギスギスしてしまいがち。

 休職者が出て人手が不足し、さらに忙しくなる悪循環に陥っているかもしれない。(関東中央病院・メンタルヘルスセンター・秋久長夫医長)

・昨年度休職者が急増したのは、コロナ禍の影響が圧倒的に大きい。

 朝の手洗いや検温、オンラインなどの新しい方法による授業、感染者が出た場合の感染経路の調査と報告・・・・。(三楽病院・精神神経科・真金薫子部長)

・教員は人に弱みを見せるのが苦手で、ぎりぎりまで我慢しがち。(順天堂大・土井一博客員教授)

 

★各地の対策

・東京都教委 2021年度から病院と連携した職場復帰支援プログラムを開始。

 ヨガや園芸療法などの活動に参加し、週3日から参加日数を増やす。

・兵庫県教委 2022年度から県の教育事務所に臨床心理士を含む「学校問題サポートチーム」を配置。

・埼玉県川口市 2人のカウンセラーが1日2、3校を回り、教員の相談に乗る事業を実施。

 

★小川正人名誉教授の話(東京大・教育行政学)

・休職者を大きく減らすには学校現場での人手不足の解消が不可欠だが、財政事情から容易に進まない現状がある。

・そもそも学校のメンタルヘルスケアの取り組みは驚くほど遅れている。

・働き方改革について話し合う場として、労働安全衛生法に基づく「衛生委員会」が設置されていても、多忙で形骸化している学校が多いだろう。

・まずは衛生委員会での議論を活発化させて業務削減に取り組み、心の病の背景にある多忙さを少しずつ解消していくことが必要ではないか。

 

 私は、No911(2020年12月23日)で「2年前、異動先では5年生を担任、ある子の反抗的な言動がきっかけの崩壊、校内で誰とも相談できずに、倒れたり、症状が悪化したりして受診し、回復までが長期化する実態が浮き彫りになりましたが、恐らく今年も変わっていないのでは?来年(2020年度)の結果は、コロナの影響もあって、さらに過去最多にならなければよいのですが。」とまとめました。予想が的中してますよね。

 何かを変えなければ、来年も過去最多になると思いますが、どうでしょう?