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No弐-629 受験の効用、進学後の影響

  今日は、11月28日(月)毎日新聞「教育の森」の「やる気レシピ」、12月5日(月)朝日新聞にあった教育社会学者の森いづみさんの記事に注目してみようと思います。

 2021年度の中学校生徒数は約323万人(前年度より約1.8万人増加)で、私立中学校に通う生徒は約7.6%、国立中学校は約0.8%いるそうです。

 都道府県別では、東京(25.2%)が一番で、高知(17.9%)、京都(13.4%)、奈良(12.8%)、神奈川(11.0%)と続き、高くなっていました。

 森さんは、追跡調査や各データに基づき、中学受験の効用、進学後の影響を分析されていました。

 

★勉強時間

・公立小から私立中などへ進学した子は、地元の公立中に進学した子よりも小6の平日の勉強時間が1日あたり1時間以上長い。

・中3では、公立進学者の勉強時間は、私立の生徒より20分ほど上回った。

 

★「非認知スキル」

・公立と私立の平均的な伸び率に目立った違いはなかった。

 

★勉強に対する意欲

・「勉強が好きだ」と答えた中学生 私立(63%)、公立(54%)

・校内の成績が上位の子どもは勉強が好きな傾向が強く、公立・私立では、成績下位の子どもより30ポイント以上高い。

 

★家庭の関与

・公立中は家庭の関与が子どもの「やる気」に与える影響が強かった。

 親と将来について会話したり、「自分の気持ちを分かってくれる」「やりたいことを応援してくれる」と感じたりしているほど、勉強への意欲が高い。

・私立進学者には、こうした傾向があまり見られなかったが、中学受験のバックアップを含め、元々親の関与が強いためだった可能性もある。

 

★私立進学のメリット・デメリット

・同じ子どもの小6時点と中1時点の回答を比べると、私立進学者にだけ強く変化が現れる項目があった。

・「授業が好きか」「尊敬できる先生がいるか」の問いに、私立進学によって肯定的な回答を寄せるようになった子どもが多い傾向にあった。

・「自分の学校が好きだ」という生徒も中1で私立が公立を上回り、高いままで3年間を過ごす傾向にある。

・私立・国立中の生徒は将来の高校、大学への希望年数が0.4年分長い。

 

・私立・国立・公立中高一貫に進んだ子は、授業の楽しさや学校への好感度が上がる一方で、成績と学習意欲、学力の自信が下がりやすい傾向があった。

 

★中学受験で頼りにする情報(ベネッセ教育総合研究所・2007)

①学校説明会や学校案内 ②塾の先生(72%) ③受験情報雑誌(53%) ④配偶者(47%) ⑤子どもと同じ学校の保護者(43%) ⑥学校以外の友人・知人(43%)

 

★森さんの話

・さまざまな指標を基に長い目で考えると、公私それぞれに特徴があり、両者では大きな差はなさそう

・経済的な事象で私立に通うことが難しかったり、受験に挫折したりして公立へ進む場合でも、親や教員の関与によって、勉強が好きになる余地が大きい。

 

 驚くようなデータはなかったと思います。公立であれ、私立であれ、目の前の子どもたちが一人でも多く「あ~、楽しかった!」と言わせるのがプロの仕事だと思っています。応援してます。