今日の朝日新聞朝刊「科学・環境」欄の「異常気象 温暖化にどれだけ影響?」という見出しが目に留まりました。
「過去に例を見ない集中豪雨や猛暑。これらの特定の異常気象に地球温暖化の影響があるのかを数値で示す『イベントアトリビューション(EA)』という手法がいま、注目されている」というのです。
今年も暑かったですよね?「EA」は聞いた覚えがあるのですが、「イベントアトリビューション」といわれるとピンときませんでした。
★今田由紀子さん(気象庁気象研究所主任研究官)の話
・最近、異常気象の頻度が増えていると世の中も感じているが、猛暑は温暖化の影響がなくても偶然に起きる可能性がある。
・「影響している可能性はあるけど、証明できない」もどかしい思いをしていた。
◎イベントアトリビューション(EA)
・EAは2010年ごろにオックスフォード大(英)の研究者が初めて提唱。
・たくさんの地球をつくり出して、その中で似たような猛暑を何個再現できたかを数えれば、発生確率という形で傾向をとらえることができる。
・これを温暖化している場合としていない場合と比べれば、温暖化で猛暑の発生確率がどう変化したのが数字で示せる。
・気候モデルを使ってコンピューターシミュレーションをしたもので、地球の大気や海洋の流れを物理法則を元に計算する。
・温暖化していない場合と、現在のしている場合の2種類の気候のもとで、地球を100個ずつ計200個つくって比べる。
◎温暖化で発生した確率
・17年7月九州北部豪雨 (約1.5倍)
・18年7月西日本豪雨(瀬戸内地域) (約3.3倍)
・22年6月下旬~7月初めの猛暑 発生確率20%(約240倍)
◎EAのよいところ
・市民1人ひとりにメッセージをダイレクトに送ることができる。
・目の前で起きた異常気象に温暖化が何%影響していたと聞けば、記憶に残る。
・温暖化対策で一番足りないのは個人個人がどれだけ問題意識を持つかということ。
・個人個人が自分の行動につなげることを考えてもらうことが一番意味がある。
・とりわけ重要なのが気象災害。問題意識をもってもらえば、準備もできて自分を守ることにもつながる。
◎今後の研究
・異常気象が起きてから情報発信するまでに、いまは早くても1カ月半ぐらいかかっている。1週間以内を目指したい。
・今後は、気温だけでなく熱中症の搬送人数、雨量だけでなく一定の地域の浸水面積、農作物の収穫の影響、被害額など具体的な変数を届けられるように改良したい。
・そのためには気象の知識だけではなく、水文学、医学、農業などの他の分野の研究者との連携が必須。
★EAの世界での進展
・今夏の中央、西ヨーロッパの干ばつは、温暖化の影響で3~6倍起こりやすくなっていた。
パキスタンの大洪水は、温暖化の影響で雨の激しさが最大75%増加。(ワールド・ウェザー・アトリビューション)
・国連気候変動会議で議論されている温暖化による「損失と被害」の証拠としても注目。
EAによって、個別の気象災害と温暖化との科学的に証明されれば、排出した国や企業が責任を問われかねない。
数字で示されれば、説得力があります。温暖化対策への問題意識を高めるには、小さいうちからでしょう。教育の役割、期待はさらに高まっていくでしょうね。
コメントをお書きください