先週11月5日の朝日新聞別冊「be」のフロントランナーはNPO法人「日本トイレ研究所」代表理事の加藤篤さん(50)でした。
加藤さんは、トイレと排泄の問題に携わって25年。「子どもたちに親しんでもらおうと、うんち型の帽子をかぶって『ウンコビッチ博士』に変身し、小学校を回る出前教室で排泄の大切さを伝えている」そうです。
トイレの問題は、4年前「No135(2018年11月8日) 学校トイレ」で取り上げました。
当時、公立の小中学校が災害時に避難拠点になるため、高齢者らが使いやすいように洋式化を急ぐ方針を決めました。
文科省の調査(平成28年)では、洋便器数は約61万個(43.3%),和便器数は約79万個(56.7%)で、和便器の方が多いのが実態でした。
洋便器率1位は、神奈川県(58.4%)、東京(54.2%)、最下位は、山口県(26.7%)で地域差がありました。
小林製薬の調査では、学校で全くうんちをしない子どもは約3割。
月1回以下しかしないという子どもと合わせると半数以上。
約半数の子どもが学校でトイレに行かず、うんちを我慢した経験があり、学校でうんちをすることに対して抵抗を感じている子は約6割に上りました。
抵抗を感じる理由は、「恥ずかしいから」「落ち着かないから」が1位・2位を占めていたのが、3番目の理由に「休み時間が短いから」が入り、小学生の忙しさが新たな問題として浮上したのでした。
2年前No846(2020年10月19日)で再び「学校のトイレ」を取り上げました。
2020年の文科省の調査では、洋式(57.0%)が13.7%伸び、逆転しました。
洋便器率1位富山県(79.3%)、東京都(71.1%)、神奈川県(70.5%)、最下位は島根県(35.3%)、山口県(37.1%)。
TOTOでは、和式の出荷数は1%以下ですが、和式は公共施設での需要と、教育上必要という学校の要望、「他人の便器には座らせたくない」という保護者の声がありました。
今年No弐-353(2022年3月15日)で「子どもの便秘」を取り上げました。
小学生の7人に1人が便秘の疑いがあることが分かりました。
「日本トイレ研究所」の調査では、便秘傾向を示す硬い便が7日間で2日以上出た児童(14.6%)、排便が0~2日の児童(8%)、毎日排便があった児童は36%(男子39.7%、女子32.3%)で、心配な数字でした。
★加藤さんのプロフィール
・1972年名古屋市生村区生まれ。
・自身も学校でできない少年だった。中学のトイレは汚くて臭く、悪友にいたずらをされる恐れもあった。
・芝浦工大卒業後、設計事務所に就職。図面を引いていると、様々な空間は試行錯誤して作りあげるのに、トイレは何も考えずにサンプル集からコピペに違和感を覚えた。
「毎日利用するトイレがコピペでいいのか」
・トイレを切り口にまちづくりに携わりたい。1997年に「地域交流センター」に転職。
・活動を開始。まず取り組んだのは山のトイレ。
・2009年NPO法人「日本トイレ研究所」を立ち上げ、代表理事に。
・2022年会員は個人約260人、75団体で構成。スタッフ6人。
★災害時のトイレ問題
・1995年の阪神・淡路大震災で顕在化。断水すると水洗トイレが使えないことがクローズアップされた。
・スタッフと研究所の会員で「トイレ掃除隊」をつくり、避難所を周り、掃除をした。
・東日本大震災では、9時間以内に8割近い人がトイレに行きたくなった。
・仮設トイレが避難所に行き渡った日数は、3日以内が3割強。
・災害では水や食料の調達が優先されがちだが、それと同じくらい、快適なトイレ環境の確保を急ぐべき。
・トイレが整備されないと、水分や食料の摂取を控え、命にかかわる。
・東日本大震災では段差仮設トイレに、車椅子でやって来たおばあちゃんが四つんばいになって、はい上がった。
・熊本でも和式便器が多く、足腰の悪いお年寄りが和式便器の床に座って用を足した。
・災害による断水で水洗は使えないが、便器は使用できるケースはままある。
その場合、そこ携帯トイレをつけて、用を足したら交換するという方法が効果的。
・携帯トイレの備蓄とノウハウを知る人材の育成が求められる。
・年配の方にはトイレを「ご不浄」という人もいて、排泄とトイレは忌み嫌う行為と場所だった。
・学校のトイレがきれいだと子どもは元気になる。公衆トイレがきれいだとまちの人は笑顔になる。
いかがでしたか?災害時のトイレに対応できる自信ありますか?
「生きる力」の一つとして、小さいうちからトイレと排泄の教育は必要ですよね?
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