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No弐-574 コンパッション

  今日の読売新聞「解説」の「『コンパッション』導入進む」からです。

 「医学教育や医療現場では近年、『コンパッション』が注目されている」んだそうです。

 

★コンパッション

・「思いやり」を意味する英語だが、一般的に使われる意味とはやや異なる。

・「マインドフルネス」と同じく、自分の心身のケアに活用できる技術の一つ。

 マインドフルネスは「意図的に、今この瞬間に、価値判断せずに注意を向けること」

 コンパッションは、「相手の苦しみを深く感じ、巻き込まれることなく、軽くしてあげたいと思う前向きな感情や態度のこと」 いずれも、元は仏教の教えの一つ。

・欧米で、医療者の燃え尽き防止対策や心の病の治療に使われ、日本でも徐々に導入され始めた。

・うつ病などの治療にも使用。「コンパッション・フォーカスト・セラピー」(英国)。

・子どもの教育プログラム「SEEラーニング」(米国)

 

★「共感」の研究(2001)

・先に受けた刺激が、後の行動に無意識的に影響を与えることを、心理学では「プライミング(効果)」と呼ぶ。

・「実験」 大学生を3つのグループに分ける。

①プライミング1 両親に愛情深く育てられた大学生の話を聞かせる。

②プライミング2 自分が愛情に包まれていた時の記憶を思い出させる。

③何も聞かせない

 

・その後、すべてのグループに<苦痛に満ちた大学生の物語>を聞かせ、質問紙で「共感」と「苦痛」を測定。

・「結果」 ①②のグループは「共感」の点数が高く、「苦痛」の点数は低かった。

 ③のグループは「共感」の点数が低かった。

 

★慈悲の瞑想

・コンパッションの練習の一つに「慈悲の瞑想」がある。

・自分で自分をコンパッションのモードに変化させる手法。

・目をつぶり、心の中で「私が苦しみから解放され、幸せになれますように」

 「大切な人が苦しみから解放され、幸せになれますように」などと唱える。

・チベットの高僧が「慈悲の瞑想」を行うと、脳活動をMRIで調べると、深い共感に関する脳の領域が活性化した。

・瞑想未経験者に「慈悲の瞑想」を2週間練習させると、「相手の苦しみを取り除きたい」という前向きな感情の点数が増え、コンパッションに関する脳の領域が活性化した。

・関西医大で12コマの授業の前後で実施すると、学生のセルフコンパッション(自分に向ける思いやり)とレジリエンス(回復力)の点数が優位に上昇した。

 

★GRACE

・米国で開発された医療者の燃え尽き防止プログラム。

・「マインドフルネス」と「コンパッション」をベースにしている。

◎GRACEのステップ

 G Gathering attention 注意を集中させる

 R  Recalling intention 動機と意図を想い起こす

 A  Attunement to self/other 自己と他者の思考・感情・感覚に気付きを向ける

 C  Considering what will serve 何が役立つかを熟慮する

 E  Engaging and Ending 行動を起こし、終結させる

 

・福井赤十字病院の緩和ケア病棟では、16年から看護師たちが「朝のGRACE」を行う。

毎朝数分間、目を閉じて自分の呼吸を感じたり、その日になすべきことに意識したりしている。

・上智大グリーフケア研究所は今年から、大切な人を亡くした人をケアする「人材養成講座」の基礎演習にGRACEを導入。

 

 「コンパッションは医療に限らず、介護職や教職員、親を介護する人など様々な立場の人が生かせる。もっと広く普及させたい」(高宮有介教授 昭和大、医学教育学)

 教育の世界でも生かせそうですね。