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No弐-572 優れた頭脳の争奪戦

 少し古い記事になりましたが、9月18日(日)の読売新聞「あすへの考」は、「優れた頭脳 世界の争奪戦」でした。

 「優秀な若者や高い専門知識・技術の持ち主、視聴分野を切り開く起業家などの『高度人材』、優れた才能を意味する『タレント』の奪い合いが激化している」ということでした。

 

★激しさを増す人材争奪戦

・今年5月、英国が有名大学の卒業生に対する異例のビザ優遇策を発表。

・対象は、3つの世界大学ランキングのうち、2つ以上で50位内に入った大学の卒業生。

・2021年の卒業生の場合は37大学が優遇。米国20校、日本は東大、京大2校。

◎注目点

①主要国の政府が具体的な大学名まで指定して若いタレントの獲得に乗り出した。

②優遇の根拠に民間の大学ランキングを使った。

③米国の大学の評価が高い。

 

★ノーベル賞受賞者

◎自然科学3賞(物理学、化学、生理学・医学)の受賞者の国別ランキング

(受賞者の研究拠点が2か所にまたがる場合は0.5人で割り振る)

1位米国305.5人(他国から来て研究中に受賞104.5人 他国に出て受賞3人)

2位英国87.5人 3位ドイツ68.5人 4位フランス33.5人 5位スイス23.5人 

6位日本17人

・米国の突出ぶりと、他国で生まれ、米国で受賞した「頭脳流入」の多さ。

 

★受賞後に米国に移った研究者

・アルバート・アインシュタイン(独)1921年物理学賞 相対性理論

・エンリコ・フェルミ(伊)1938年物理学賞 原爆開発

・フランシス・クリック(英)1962年生理学・医学賞 DNA構造解明

・フォン・ブラウン(独) ロケット開発

・フォン・ノイマン(ハンガリー) コンピュータの基礎

★IT企業の移民の力

・グーグルの創始者の1人はロシア生まれ、現在の経営トップはインド出身者。 

 

★21世紀の攻防

◎留学生の受け入れ

 1位米国99万人(中国人33万人) 2位英国 3位オーストラリア 日本18万人

・米国に続々と集まった世界の頭脳は原子力や宇宙から、軍事、情報、生命科学まで、様々な分野で活躍し、20世紀を「米国の世紀」にする大きな力となった。

・英国、カナダ、シンガポールなど多くの国があの手この手の優遇策で若い才能をひきつけようとしている。先進国以外の国も争奪戦に参入している。

・デジタル分野や電気自動車の新しい産業は、優秀な人材を確保できれば、途上国が先進国を出し抜くこともありうる。

 

★中国の力

◎留学生の送り出し

 1位中国100万人 2位インド 米国9万人 日本3万人

・1970年代から米欧に次々と留学生を送り、今は最大の留学生送り出し国。

◎米国で外国人が取得した研究博士号

 1位中国6337人 2位インド2256人 3位韓国1054人 日本114人

・米国との共同の科学論文の数も1位。注目度の高い論文の数も米国をしのぐ。

・一方、優秀な研究者呼び戻しを「千人計画」などで本格化。

 

★日本の立ち位置

・日本は世界の「タレント」に選ばれる国になっていない。

◎経済協力開発機構(OECD)の各国の魅力度を比べた「人材誘致指数」

 1位オーストラリア 2位スウェーデン 3位スイス 4位米国 25位日本

◎スイスのビジネススクールIMDの「世界人材ランキング」

 1位スイス 2位スウェーデン 3位ルクセンブルク 14位米国 36位中国 39位日本

 

◎日本の弱点

・移民問題などに関する社会の閉鎖性・経営幹部の能力や経営者の国際経験不足・語学力(言葉の壁)など

・留学に出る若者の数の減少。

・米国での博士号取得者も中国やインドに大きく引き離されている。

◎日本の強み

・治安の良さ・公教育のレベルの高さ(PISAの好成績)

 

・何よりも優先すべきなのは国内で人を育て、存分に活躍してもらう環境を整えること。

・優れた人材の獲得はどの国にも増して重要な課題となる。

 

 日本の強みやよさを見失うことなく、閉鎖的な弱点を克服していかないと、他国の脅威に屈する日が来てしまいそうで不安になりました。