朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。
今回は、9月3日から9月24日の4回分です。
①「美映え」 「ばえる」の意味も響かせて(9月3日)
生活雑貨の店でベージュの不織布マスクのパッケージに<美映え>と書いてあったそうです。
・昔も「〇〇映え」はあり、「化粧映え」「変わり映え」など、数は多くなかったが、2017年頃から「ばえる」という言葉が一般化した。
・SNSに投稿した写真がきれいに目立つことを「SNS映え」などと言っていたのが、後半だけ略されて、動詞化した。
・毎日新聞(18年12月)に<「映える」ご神木で復活>という神社の見事な神木の記事が出たが、担当記者によると「映える」は「ばえる」のつもりだった。
・ますくに「美映え」と書いてあるのを見た人は、単に「美しさがはえるマスク」というだけでなく「色が自然で、写真を撮りたくなる『ばえる』マスク」と受け取るはず。
②「タクシープール」 ほんのり関西風味を感じる(9月10日)
築地の駐車施設の看板に<タクシープール>と書いてあったそうです。
・「タクシープール」は和製英語で<プールは「たまる場所」の意>と説明されている。
・関西周辺には至る所に「モータープール」がある。有料駐車場のこと。
・「モータープール」も日本語用法で本来は進駐軍の車両共同利用施設を意味した。
・今では関西周辺で使われることばで、東京では一般的ではない。
・英語で「car pool」と言うと、車の共同利用、相乗りのことを指す。
③●(●は喜の異体字) 「喜寿」は777歳ではない(9月17日)
街の店の看板に<三●(●は喜の異体字)>と書かれてあったそうです。
・七を3つ重ねた漢字は「喜」の異字体の「き」で「さんき」とよぶ。
・草書体からできた字体。
・「品」「森」のような形「品字様(ひんじよう)」と言う。倉本美津留さん(放送作家)は「ピラミッド漢字」と名付けている。
・「喜」は「七、十、七」とも書かれる。左下の部分が「十」の縦棒がはねた形。
・「七十七」とも読めるので、77歳のことを「喜寿」とか「喜の字」とか言う。
④「しゃり感」 「麻の手触り」だけでなく(9月24日)
青果店の店先のスイカの値札に<シャリ感あふれる!>と書いてあったそうです。
・21世紀に入って、擬音(オンオマトペ)に「感」をつける例によく出合うようになった。
・レタスの「しゃきしゃき感」、パンナコッタの「ふるふる感」、食パンの「もちっと感」など。
・「しゃり感」も、きっとその一つに違いない。スイカのしゃりしゃりした食感のことだろう。
・「しゃり感」は、麻織物などの少し硬くて心地よい手触りのこと。服飾関係では昔から使われている。
・果物に「しゃり感」を使う例は以前からもある。スイカやナシなどの食感に関して「しゃり感」が使われている。
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