先週No弐-530(9月8日)、No弐-531(9月9日)で、朝日新聞の「ギフテッド 才能の光と影」から3人の少年の例を紹介しました。
読売新聞にも9月9日(金)の朝刊「解説」に「ギフテッド教育」のことが取り上げられていました。こちらの視点にも注目してみたいと思います。
★特異な才能のある子どもへの支援の現状
・公教育ではあまり行われておらず、NPOや民間が受け皿になっている。
・NPO法人が運営するフリースクール「翔和学園」(東京)では2015年から、知能検査の数値が平均よりも高い子どもを含め、集団生活にもなじまない子を受け入れている。
教科学習を課すのではなく、それぞれの興味関心を尊重する。現在小中学生8名在籍。
★ギフテッドの定義
・国や地域によって異なる。国内のギフテッドの定義は曖昧。
・政府の資料では、特異の才能のある子供をIQ130以上と仮定した場合、2%程度と試算。
・文科省は21年7月から有識者会議で特異な才能のある子供に関する議論を開始。
・まずは実態を把握しようと、ネットでアンケートを実施。
★アンケートから浮かぶ「異才」の子供たちの状況(980件の事例)
◎特異な才能
・生後10カ月で日本語・英語でコミュニケ―ションが取れる。
・小学3年で、独学で高校や大学レベルの数学を学ぶ。
・5歳の頃から研究を始め、7歳で大学施設で研究をする。
・4歳で進化論、8歳で量子力学や相対性理論を理解する。
◎学校生活の困難
・教科書の内容をすべて理解していたが周囲に合わせろと叱られ、授業中は常に暇を持て余した。
・発言すると授業の雰囲気を壊すので、わからないふりをする。
・暗算できるのに式や筆算を書かされるので苦痛でならない。
・学校の友達と話すとき、言葉を簡単にしないと通じない。
・同級生を話がかみ合わず、友だちに変わっている子扱いされる。
・知能は早熟だが感情のコントロールが未熟で、ささいなことで他の児童と言い合いになる。
★海外の「ギフテッド教育」
・大きく「英才教育型」と「支援型」に分かれる。
「英才教育型」国家として人材開発。韓国やシンガポールなど
「支援型」一人ひとりのニーズや困りごとに対応。フィンランドなど
①韓国(対象となる子どもは約1.8%)
・2000年の「英才教育振興法」に基づき、政府が実施。
・才能のある児童生徒を選抜し、英才教育を行う学校で指導。
②シンガポール(対象となる子どもは約1%)
・小学3年全員に共通の試験を行い、選抜。政府が実施。
・特別なクラスで英語、算数、科学の授業を行う。
③アメリカ(全米公立学校の約6.7%が才能教育プログラムに参加 2013~14)
・連邦法でギフテッドの子どもを「知能、創造性、芸術、リーダーシップ、特定の学問分野の能力のいずれかの特性が並外れて優れた者」と規定。
・州や学区、学校で状況は異なる。
・小中高校や大学への早期入学、飛び級、夏のプログラム、放課後スクールなど
④デンマーク(対象となる子どもは約2~5%。ある自治体)
・放課後の特別授業など、自治体で異なる教育を実施。
・IQ130以上を選抜する私学もある。
★日本の「飛び入学」制度。
・優れた能力のある生徒には大学入学の機会を与える。
・高校を中退し、大学に入学できる。
・1988年度に千葉大学初めて導入し、国公私立10大学(2大学はすでに募集停止)で実施。20年間の累計入学者144人。
★わが国では?
・有識者会議は、「支援型」に提言素案をまとめた。
・IQと言った特定の基準や数値で才能を定義することは行わないと素案に明記。
・選抜にすると「過度な競争を発生させる」ことを懸念。
・支援は特別な教育課程は設けず、現行制度の中で柔軟な運用をする方針。
英才教育型ではなく、支援型を目指す方向は間違っていないと思いますが、どうやって「出る杭」を伸ばすかなんです。ぜひ伸びる場や情報を積極的に提供してあげてほしいです。個を大切にする。どの子にも伸びる権利があるのですから。
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