朝日新聞朝刊(7月13日・20日)に「水泳授業のこれから」がありました。
水泳授業については、3年前に「No377 水泳指導の民間委託(2019年7月8日)」で取り上げました。
・千葉市が、教員の負担軽減や施設の維持管理コスト削減を目的に、2019年度から水泳の授業を民間のスイミングクラブに委託。
・フィットネスクラブの温水プールに担任1人が5・6年生72人を連れていき、3グループのレベル別に分かれて、4人のインストラクターから1時間指導を受ける。
・民間スイミングスクールのインストラクターが水泳の指導に当たるため、子どもたちの泳力の向上が期待でき、天候に左右されず、盗撮などの心配がない。温水プールや温水シャワーへの期待も高い。
・年間の維持管理費は1校で150万円。スイミングスクール委託金は2校で400万円。
トータルの経費の比較では、水泳授業補助委託を実施した場合の方が安価。
・神奈川県海老名市は、2011年度ですべての小中学校のプールを全廃。代わりに市内に3カ所の公共屋内プールを使用。プールは、つり堀として再利用されているところもあった。
2年前には、「No763 水泳授業(2020年7月28日)」で「水泳授業は不要不急か」というテーマを取り上げました。
・教育現場で水泳軽視の傾向が強まり、この20年で全国の学校で約2000のプールがなくなる。老朽化で改修も新設もされないため。
・教員採用試験では水泳の実技がなくなりつつある。
・日本の学校にプールが造られたきっかけは、1955年に瀬戸内海で宇高連絡船の紫雲丸が沈没し、修学旅行中の児童生徒100人を含む168人が亡くなった事故から。
(1968年学習指導要領の小学校体育に「水泳」が盛り込まれる。)
・以降水難の死者・行方不明者は3000人以上(1975)から、695人(2019まで大幅減少
・学校における水泳教育は本来、近代泳法だけでなく呼吸の確保や浮く姿勢、川や海での水の違い、着衣泳など多岐にわたっている。
・不要派は、生活に支障はなく、泳ぎは大人になってからでも覚えられる。
水泳授業は、プールの管理、監視で教師の負担が大きい。
水難事故を防ぐ指導や泳ぎに触れる機会を年に数回、イベント的にすれば十分。
今回の記事も千葉市の小学校の5年生の水泳授業の例が紹介されていました。
・約80人の児童たちは、クラブが用意するバスで片道10分ほどの距離をやってくる。
・クラブのコーチが、まず児童の泳力を把握する。8人のコーチが水に入る。
・2コマずつの授業を計5回。一般の利用者がいない休館日を利用。
・千葉市では、今年度市内108校のうち9校が民間事業者のプールを訪れる形、2校が自校のプールにコーチを派遣してもらう形をとっている。
・長野市では、今年度6校で民間委託。
・市内54校の小学校のうち、築40年を超えるプールは23。
・「次善策は地域の拠点校をつくり、そこのプールだけを改修し、周囲の学校から児童を集めて授業をする方向を考えている」(長野市担当者)
★水泳指導の課題
①費用 新設すると費用は約1億1200万円。10年ごとの塗装改修費は約560万円。
②管理 プールは安全点検と念入りな清掃が必要で、維持管理の業務が教員多忙化を助長。
③評価 学校と民間の評価の仕方は一致しないため、教員とコーチが学習内容を確認したうえで、連携が必要。(評価は教師、コーチはフォームの基準をアシスト)
④水辺の安全 水辺や水中で命を守るためのカリキュラムの確保
・長野市では、委託先に造波、流水プールがある。
・民間委託した小学校の5・6年生が、波を起こせる市営のプールを利用して、流されて助けを待つことを想定した仰向け浮き身やペットボトルを使って浮き、呼吸を確保する学習を実施。
小学生で生きる力として泳ぐ力はぜひ身につけさせたいす。しかし、プール改修が迫る中、働き方改革では学校での水泳指導者継続は見直してもいい視点かもしれませんね。
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