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No弐-432 マスクが乳幼児に与える影響

  今日も読売新聞朝刊「コロナ警告」第2部「ゆらぐ対人関係」からです。

 今日は、第2回(5月31日)の「マスクが乳幼児に与える影響」を紹介します。

 

★保育士が感じるマスク着用が乳幼児に与える影響調査(昨夏、七木田教授・比治山大)

◎変化を感じる ・強く感じる(13%) ・感じる(65%) 計78%  ・変化はない(22%)

◎実感する具体的な変化

・泣いて訴える(47%) ・表情が乏しい(46%) ・会話が少ない(39%) 

・反応が乏しくなった(28%) ・発音・発語に問題を感じる(20%)

・人見知りをしなくなった(6%)

 

★男児(1歳8か月)の例

・自宅(越谷市)の前で祖母に名前を呼ばれ、固まってしまった。知らない人から声をかけられたような反応を見せる長男に、母親は驚いた。

・祖母は隣に住んでおり、よく保育園の送迎をしてくれている。普段は、マスク姿だが、この日はたまたま畑仕事のため外していた。

・「マスクに囲まれていることが、息子の成長に悪影響があるのでは」

 

★丸山純園長(千葉県勝田市私立勝田保育園)の話

・この2年、人見知りをしない子が増えている気がする。

・日常的に接しない園長が1歳児の部屋に入ると、激しく泣かれるのが通例だが、最近は警戒せずに駆け寄ってくる子もいる。

・人見知りは顔を認識できている成長の証し。顔が区別できているのかと不安に感じる時がある。

 

★透明マスク

・口元が見える透明マスクを導入する園もある。

・透明マスクを導入した保育施設では、昨年度入園の子どもたちは施設に慣れるのに3週間ほどかかりよく泣いたが、今年度は1週間ほどでほぼ泣かなくなった。

・透明マスクの効果は高いが、市販価格は1個1000円前後と安くない。

・越谷市では、4月に18園に1000枚を配布したが、購入費だけで約150万円。

・繰り返し使えるが、すぐに曇ったり、蒸れたりと着用し続けるのが難しい。

・現場では、読み聞かせや食事に使用を限るなど試行錯誤を重ねている。

 

 透明マスクの記事は、毎日新聞朝刊(5月1日)にもありました。

・越谷市のほか、稲沢市(愛知県)でも昨夏公立保育所、幼稚園に約2200枚配布。

・透明マスクは、保護者や保育士からも好意的な声。

・紙おむつなどを製造するユニ・チャームでは「顔が見えて」マスクを発売して、4月で1年が経った。

・きっかけは聴覚障害者の社員の「相手がマスクをしていうので表情がわからず業務に支障をきたしている」と言う声。

・聴覚障害者の通う特別支援学校や英会話教室などで需要が増えている。

 

 私は、保育に限らず、教育現場でよりよい透明マスクが普及されるのを望む一人です。

 

 明和政子教授(京都大・発達科学)の話もありましたが、「No弐-347 コロナ禍の子どもたち3」(3月9日)で、朝日新聞「コロナと子ども」が連載記事(4回目 3月6日)から紹介したので、再度送りますね。

★子どもたちの脳の発達の影響

・脳が発達する過程では、環境の影響を受けやすい「感受性期」と言う特別な時期がある。

 この時期の環境や経験は生涯をもつことになる脳や心の柱となる重要なもの。

・大脳皮質にある「視覚野」や「聴覚野」の発達の感受性期は、生後数か月から就学期前くらいまでなので、子どもたちが現在置かれている状況は軽視できない。

・マスクをした他者と過ごす日常では、相手の表情や口元から発せられる声を見聞きし、それをまねしながら学ぶ機会が激減している。

 

★コロナ禍の子どもの発達調査(米ブラウン大・2021年8月)

・コロナ禍以前に生まれた生後3か月から3歳の子どもたちの認知発達の平均を100とした場合、コロナ禍で生まれた同年代の子どもたちは78まで低下した。

 

★学齢期の子どもたちの影響

・いま小学生以上の子どもたちは、笑顔を介したやりとりが「心地いい」と感じたり、相手の喜怒哀楽に共感したりといった経験を、コロナ禍以前に得ることができている世代だが、むしろ心配なのは、そうした記憶が持つゆえの心的ストレスである。記憶はあるのに、制約ばかり。満たされなさは、とてもつらいもの。

 

★「前頭前野」の発達の影響

・前頭前野の感受性期は、4,5歳から始まる。

・前頭前野は相手の心を、自分の心とは異なり、理解する働きを持つ。

 それにより相手の視点で想像したり、相手の置かれた状況に応じて協力したりできる。

・前頭前野の発達には、環境が大きく影響する。

・共感できてうれしい気持ち。分かり合えず残念に思う気持ち。それを味わえる日常の経験が必要。

 

★気がかりな点

・他者と触れ合いたい、心を共有したいという動機があっても、それを実現できない現実がある。そのストレスに対処するために期待すること自体をあきらめていく。

・こういう状況になったら現行の「新しい生活様式」を見直すという見通しを示さないまま、いつまで黙食やマスク着用を子どもたちに課していくのは問題。この問題を議論し、実践していく時期は、とうに迎えている。