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No弐-412  小川未明の「野ばら」

 一昨日、図書館に行った時、もうひとつ目に留まった記事がありました。5月10日の毎日新聞夕刊にあった「日本のアンデルセン・小川未明『野ばら』 100年前の童話 侵攻の惨禍予見?」です。今日は、これを紹介してみようと思います。

 

★小川未明さん(1882~1961)

・「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれ、浜田広介と坪田譲治と並んで「児童文学界の三種の神器」と評された。(Wikipedia)

・第1次世界大戦や太平洋戦争のさなかを生きた未明は、小説のほか約1200編の童話を残した。

・出身地の新潟の伝説を基にしたとされる「赤い蝋燭と人魚」などがよく知られている。

・「野ばら」は1920年、大正日日新聞に掲載された。

 

★平和を願う思い

・昭和初期には、雑誌「婦人之友」に「男の子を見るたびに『戦争』について考えます」という文章を寄せた。

・世の親が健やかに育てようと心を砕いてきた子供たちが、戦争によって危険にさらされ、

「互いに、罪もなく、怨みもなく、しかも殺し合って死ななければならぬ」

「戦うことに於いて、いかなる正義が得られ、いかなる真理の裁断が下され得るか」

と、強く反戦を訴えた。 

・未明は2人の子を病気で失った経験もあった。

 

★「野ばら」のあらすじ

・大きな国と小さな国は、国境を定めた石碑を守るため、それぞれ老人(大きな国)と青年(小さな国)の兵士を派遣していた。

・そこには1株の野ばらが茂っていた。

・2人の兵士はいつしか仲良くなり、毎日将棋を差すようになる。

 

・やがて二つの国は「利益問題」から戦争を始める。

・2人は図らずも敵同士になり、少佐の老人は首を持っていけば出世ができると青年に言う。

・青年は「どうして私とあなたとが敵(かたき)同志でしょう」と拒み、戦地へと向かう。

 

・青年が戦地に去り、老人は国境の地で1人になった。

・やがて、「小さな国」が戦いに負け、兵士が皆殺しになったと聞く。

・青年の身を案じながら石碑の脇でまどろむと、一列の軍隊を指揮する青年が現れ、黙礼をして野ばらの香りを嗅いだ。

・彼に話しかけようとした時に老人は目を覚まし、夢だったことを知る。

・しばらく後、その野ばらは枯れてしまった。

 

 その年の秋、老人は南の方へ暇をもらって帰ります。ぜひ全文を読んでみてください。

「ウクライナ侵攻が終結した時、両国の国境には、果たして何が残されているのだろうか」と記事はまとめていました。

 高学年の子どもたちと一緒に読んだら、意義のある道徳になるかもしれません。