朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は先月3月5日から3月26日の4回分です。
①「~説」 おそらく学説はなさそう(3月5日)
秋葉原のビルに入っているスーツ専門のポスターに<好感度も、オシャレ度も、「冬の白。最強説」。>と書いてあったそうです。
・白が<最強説>と言っても、そんな学説があるわけではなさそう。
・「冬の白は新鮮で最強だと思うよ」という意味合いを「~説」と表現しているのでしょう。
・こういう「~説」の使い方は、日本語学者の山口仲美さんが07年に報告しています。
・推測に「~説」というオーバーな接辞をつけて、面白さを出している。
・この「~説」は、まだ冗談半分の感じがありますが、いずれ推測を表す一般的なことばになるかもしれません。
②「利きTEA」 本来の「利き茶」と区別?(3月12日)
アジアンカフェで<利きTEA>というキャンペーンを行っていたそうです。
・何種類かのお茶を、お試しサイズのカップで販売し、飲み比べてもらおうというもの。
・いろいろな「利き○○」があります。「利きワイン」「利きビール」「利きリンゴ」「利きラーメン」「利きカマボコ」など、何でもありです。
・本来、「利き○○」と言えば、「利き茶」「利き酒」ぐらいしかありませんでした。
・利き茶は「聞き茶」で「聞」は香りをかぐこと。それが今は「利き○○」で銘柄などを当てる場合に広く使います。
・洋菓子のことを「スイーツ」というようになった結果、今では和菓子を「和スイーツ」ということもあります。<利きTEA>の例も、知れに似た感じがあります。
③「てまえどり」 名刺はインパクトが大きい(3月19日)
コンビニの棚に<てまえどり>と言う表示があったそうです。
・この表示が現れたのは、2021年6月のこと。
・棚の食品から奥から取ると、手前が売れ残り、食品ロスにつながる。「だから、手前から取りましょう」というのです。
・「食品は手前からお取りください」という文の形なら、そんなに注意を引かれなかったかもしれません。
・<てまえどり>と名詞の形になっていると「何のことだろう?」と関心が向きます。
・駅構内に<「声かけ」をお願いします>というポスターがあります。困っている人に声をかけてください、ではなく「声かけ」と名詞にすることで印象が強まります。
④「よく咲くスミレ」 店のアイデアかと思ったら(3月26日)
生花店の前を通りかかった時、<よく咲くスミレ \120>と手書きの文字を見つけたそうです。
・あとで調べてみると「よく咲くスミレ」は、実はある種苗会社が開発したバンジーの品種だそうです。
・花芽が多く、本当によく咲くらしい。生花店は、その商品名を値札に書いただけでした。
・素朴で素直な商品名が、店の人に手書きされたことで、味わいを生んでいます。
・品種を開発した人々の思いが伝わってくるような気がします。
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