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No弐-347 コロナ禍の子どもたち3

 朝のウオーキングで桜を発見しました。春が大分近づいてきましたね。

 今日も朝日新聞教育欄の「コロナと子ども」が連載記事からです。

 今日は、2人の大学教授の話に注目です。

 はじめに、「小児感染学」の立場から3回(3月1日)の斎藤昭彦教授(新潟大)の話です。

★一斉休校の問題点

・学校の様々な機能を子どもから奪い、負の影響が出た。

・教育を受けることだけでなく、決まった時間に寝起きして規則正しい生活をする、栄養バランスの良い給食を食べられるといった学校のもつ健康や福祉の役割が損なわれた。

・集団一緒に生活することで仲間との距離の取り方を学んだり、居場所を探したりといった社会性を育む機会も失われた。

・子どもが家にいることで仕事に行けないなど、大人の生産性も下がった。

・親と子が長時間閉鎖された空間に一緒にいることで様々なひずみが生じ、子どもの虐待やネグレクトの件数の報告が増えた。

・スマホやゲームの時間が増え、子どもの発達に悪い影響を与えたという見方もある。

・一定のリスクを取りながらも学校活動を続けることが必要。

 

 次に「比較認知発達科学」の立場から4回目(3月6日)の明和政子教授(京都大)の話です。

★子どもたちの脳の発達の影響

・脳が発達する過程では、環境の影響を受けやすい「感受性期」と言う特別な時期がある。

 この時期の環境や経験は生涯をもつことになる脳や心の柱となる重要なもの。

・大脳皮質にある「視覚野」や「聴覚野」の発達の感受性期は、生後数か月から就学期前くらいまでなので、子どもたちが現在置かれている状況は軽視できない。

・マスクをした他者と過ごす日常では、相手の表情や口元から発せられる声を見聞きし、それをまねしながら学ぶ機会が激減している。

 

★コロナ禍の子どもの発達調査(米ブラウン大・2021年8月)

・コロナ禍以前に生まれた生後3か月から3歳の子どもたちの認知発達の平均を100とした場合、コロナ禍で生まれた同年代の子どもたちは78まで低下した。

 

★学齢期の子どもたちの影響

・いま小学生以上の子どもたちは、笑顔を介したやりとりが「心地いい」と感じたり、相手の喜怒哀楽に共感したりといった経験を、コロナ禍以前に得ることができている世代だが、むしろ心配なのは、そうした記憶が持つゆえの心的ストレスである。

 記憶はあるのに、制約ばかり。満たされなさは、とてもつらいもの。

 

★「前頭前野」の発達の影響

・前頭前野の感受性期は、4,5歳から始まる。

・前頭前野は相手の心を、自分の心とは異なり、理解する働きを持つ。

 それにより相手の視点で想像したり、相手の置かれた状況に応じて協力したりできる。

・前頭前野の発達には、環境が大きく影響する。

・共感できてうれしい気持ち。分かり合えず残念に思う気持ち。それを味わえる日常の経験が必要。

 

★気がかりな点

・他者と触れ合いたい、心を共有したいという動機がっても、それを実現できない現実がある。そのストレスに対処するために期待すること自体をあきらめていく。

・こういう状況になったら現行の「新しい生活様式」を見直すという見通しを示さないまま、いつまで黙食やマスク着用を子どもたちに課していくのは問題。

この問題を議論し、実践していく時期は、とうに迎えている。

 

 マスクが当たり前の生活になってしまった今、子どもたちの脳や心の発達に目を向けていかないと教育界はますます大変になっていくと思いませんか?