遅くなりましたが、今日は1月30日(日)読売新聞の「ONLINEシンポジウム 教育の急激なデジタル化の問題を考える」の内容を2日に分けて伝えようと思います。
このシンポジウムは、昨年12月17日東京・内幸町で開かれ、酒井邦嘉教授(東大・言語脳科学)と堤未果さん(国際ジャーナリスト)が「教育のデジタル化が子どもの脳に与える影響を考える」をテーマに対談しました。
★端末配備の現状
◎酒井教授
・大学でオンライン授業は非常に重要。コロナ禍で端末を使えるのは幸運。
・ライブ感も授業では大切。学生同士の反応の共有は明らかに有効。
・同時に同じ教材や学びの場を共有して数百人に発信し、一緒に議論できる。
・リアルタイムで海外と意見交換する可能性も広がった。
◎堤氏
・コロナ禍で教育を続けていけたのは、デジタル技術があったから。
・学校に行けなかった子どもたちが、オンライン教育で学校とつながる。
・校内で、先生方の資料やスケジュールの管理、報告が1カ所のノートアプリで管理できるようになった学校もある。事務作業の効率化という時短効果は大きかった。
★紙とデジタルの脳の働きの差
◎酒井教授
・受容の仕方で脳の反応が変わる。
・日常のスケジュール管理を①スマホで打つ②タブレットにペンで書く③紙の手帳に書くで比べると、③が最も早く、簡単な内容ならほぼ完ぺきに思い出せた。①②は個人差が大きかった。
・脳の活動は、記憶に関係する海馬だけではなく、視覚野や言語野の反応にも差が出た。
・紙の方が手がかりが多く、場所を自然と記憶できる。
・紙の本は形状記憶もでき、じっくり読んだところがすぐ出てくる。
・各ページに個性がない電子書籍は不利。
・デジタル教科書も、どこに何が書いてあったか思い出せないようでは、大問題。
・学習は分からないところを見返し、読み直すことが大切で、紙の効果は大きい。
★「個別最適化学習」
◎堤氏
・スピードには中毒性があり、慣れてしまうと答えが出ない時にイライラし、「なぜ」と立ち止まって考えられなくなる。
・個別最適化にすることで、教室で先生や速い子が遅い子に教える相互学習の機会も失われる。
・タブレットの個別最適化学習は効率的ですが、自分より理解が遅い子が同じ空間にいなくなることが問題。異なる他者の存在は、思いやりの原点。
◎酒井教授
・理解度によって進度は大きく違い、一人ひとり、必要な繰り返し学習の頻度や回数も違う。最適化は困難。
★これからのデジタル教育
◎酒井教授
・機械やAIを安易に使うことは「考えなくていい」と教えているようなもの。
・教育は決して効率ではない。「無駄こそ命」。
・いかに紙を大事にするか。ポイントは紙の質感と情報量を軽視しない。
・デジタル化すれば、抜け落ちる情報があると考え、使い分ける。
・基本は、紙が「主」、デジタルは「従」ということを明確にしたい。
◎堤氏
・教育の質とスピードは、決してパラレルではないことを忘れてはいけない。
・検索サイトやSNSは退屈しないよう、常に刺激を与えて長時間見させることで利益を得るビジネスモデル。
・刺激がなく退屈した時にこそ、子どもは創造性を使って面白い遊びを始める。
・低学年、初等教育ほど「退屈な時間」は大切。
・PISA上位に、教室の対人関係を大事にする国が多い。
・デジタルを一度導入すると、引き返すのは難しい。
・退屈や無駄の中に、実は人生の価値や、大人になって役立つものがあることを私たちがどれだけ伝えていけるかが重要な鍵。
「無駄こそ命」「退屈な時間が大切」 肝に銘じておきましょう。
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