コロナの感染拡大で、オンラインでのやり取りやマスクをしての会話も増え、コミュニケーションのあり方が大きく変わりました。
脳研究で有名な川島隆太教授(東北大加齢研究所所長)はこうした変化が社会に与える影響を危惧した記事(朝日新聞朝刊2月3日)が印象に残ったので、今日はこれを紹介します。
★「相手の気持ちを思いやりながら行動する」のにオンラインと対面に違いはあるか?
・大学生(東北大)を5人1組にし、学部の勉強や趣味について、対面とオンラインで会話をし、脳活動を比較する実験をした。
・脳活動センサーを使って見てみると、良いコミュニケーションが取れている時はお互いの脳活動がシンクロし、揺らぎが同期するという現象が起こる。
・対面で顔を見ながら会話している時は5人の脳反応は同期していたが、オンラインではそれが一切見られなかった。
★オンラインの影響
・脳活動が同期しないということは、オンラインは脳にとってはコミュニケーションになっていないということ。
・つまり、情報が伝達できるが感情は共有していない、相手と心がつながっていないことを意味する。
・これが多用され続ければ「人と関わっているけど孤独」という矛盾したことが起こってくるのではないかと推測する。
・同期しない理由の一つが「視線」。
・心理学でも、コミュニケーションの場面では、視線が合うことで共感が得やすい。
・オンラインでは、カメラを見て話せば視線は合うが、画面を見るとずれてしまう。これが大きな違和感になる。
・もう一つは、「音声と画像のズレ」。
・SNSの利用も増えたが、仕事や勉強などと並行することが多く、メインの作業への「割り込み」になる。
・スイッチがあっちに入ったり、こっちに入ったりする「スイッチング」が増えるほど、注意能力が下がり、「うつ状態」になりやすい。
★子どもへの影響
・仙台市内の小中高生7万人の「学力と生活習慣」のデータ解析をすると、コロナ禍で子どもの自尊心と自己肯定感が急激に下がっていた。
・特に発達期に自己肯定感が低いと、希望をもって将来を見通すこと苦手になることもある。
・オンラインツールは便利だが、一日も早く、対面のコミュニケーションは可能な社会に戻さなければと、強い危機感を持っている。
・リアルな場でも、マスクが当たり前になり、表情が乏しくなる、感情が読み取りにくいと言ったことが起きている。
・コミュニケーションが苦手な子どもたちが社会の中心となった時、ネガティブな現象が幅広く出て、「コロナ世代」と否定的な文脈で呼ばれる可能性があるのではと危惧している。
マスクがあっても、感情の共有があってこそのコミュニケーションを意識していきたいですね。
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