1月22日(土)の朝日新聞朝刊別冊「be」の「サザエさんをさがして」のテーマは「よろめき」でした。久しく聞かなくなった言葉なので、懐かしくなり読んでみました。
・「よろめき」の本来の意味は。「足どりが乱れて倒れそうになること」。
・心を奪われることを「よろめく」ということはあったようだが、ずばり「浮気をする」と言う第3の意味が加わったのは、小説がヒットしてからだ。
★「美徳のよろめき」著者 三島由紀夫
・58年2月13日、外遊から帰国した三島本人へのインタビュー記事が載った。そっけなく「よろめき」に触れたくだりがある。
<旅行中に、祖国では氏のかん通小説が頼みもしないのにベストセラーになったり、その題名が一世を風びする流行語になったりして、「政治経済にまで使われているのは驚いた」>
・この時、三島は33歳。数か月後に見合い結婚する直前で、独身だった。
・「美徳のよろめき」は、代表作「金閣寺」(1956)の後に発表され、本人曰く<労作の後の安息>で書いた作品。
・「金閣寺」と同時期に雑誌に連載された「永すぎた春」もベストセラーとしてタイトルが流行語になる。
・この時期の三島は、芸術の極みに達する一方、大衆受けを狙っただろう作品も外さなかった。文学界の二刀流である。
・「美徳のよろめき」は、裕福な人妻が浮気相手の青年に黙って2度も妊娠中絶し、その痛みを伴う経験をかてに、青年との別れを決意する物語。
・道徳に背いたヒロインを罰する話にはなっておらず、読後感は悪くない。
★「よろめき」の流行
・その流行ぶりは、当時の朝日新聞の紙面からもうかがえる。
・コラム「経済気象台」(57年8月5日)の見出しは「繁栄のよろめき」。
高度経済成長さ中の株式の暴落に警鐘を鳴らす内容。
・コラム「記者席」の見出しは「松永文相〝よろめき説〞を否定」。
教員の勤務評定の問題で文部大臣の姿勢が与党の意に沿わない方向にぶれている見方。
・「よろめき休暇」と言う映画タイトル(12月17日夕刊)
原題は「Kiss Them For Me 」(私に代わって彼らにキスを)。あきらかにそそっかしく流行に便乗した邦題。
私が母のお腹にいた頃「よろめき夫人」「よろめきドラマ」という言葉が流行っていたと思うと、母もドキドキしたのかしら?
ちなみに、漢字にすると「蹌踉めき」と書きます。初めて見る漢字でした。
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