朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は11月27日から12月18日の4回分です。
①「デリバる」 日本語としては伝統的!?(11月27日)
ハンバーガー店の壁の広告に<デリばる?>と書いてあったそうです。
・「デリバリー」(配達)の末尾を「る」にした動詞です。
・「デリバる」は世相を反映した今っぽいことばと言う気がします。
・ツイッターでも<ピザをデリバった>などと爆発的に使われています。
・「みんなの国語辞典!」(大修館書店2006)に「出前をとる」の意味で載っています。
・ことばの末尾に「る」をつけて動詞にする方法は、日本語としては伝統的なものです。
・「料理する」の意味で「料る」、「退治する」の意味で「退治る」は、江戸時代からありました。
・明治時代には「ハイかる」という動詞もできました。
・その後「サボる」「デモる」「メモる」など、例は無数にあります。
②「チルする」 今の人々の願望を反映か(12月4日)
ドリンクの自動販売機の広告に<チルする?>と書いてあったそうです。
・「チル」は「チルアウト」から来ています。踊った後など気持ちを落ち着かせることで、その時に聞く音楽のことも指します。
・さらに「気持ちをゆったりさせる」という意味で「チルする」と動詞化するようになりました。
・「チルい曲」と言えば「ゆったりできる曲」。2020年代後半に広まった言い方です。
・「チルする?」は「もっとゆったりしないか?」というメッセージが響くのではないでしょうか。
・「超チルなラッパー」というフレーズがSNSで話題になりました。「気楽に生きているラッパー(ラップ演奏者)」といった意味。
・「チル」は今や大人気です。
③「投げ銭」 コロナ禍で表現者助ける(12月11日)
新宿で路上ライブをする若者のお金を入れるケースに<投げ銭>と書かれてあったそうです。
・もともとは、大道芸人や舞台の芸人にご祝儀の小銭を投げることを言いました。
・江戸時代には獅子舞に12の投げ銭を与えていたともいいます。
・20世紀末、気にいったウエブサイトに閲覧者がカンパする仕組みができ、「投げ銭システム」と言いました。
・現在では、ライブ動画などの配信者にギフトが贈れるようになり、これも「投げ銭」と言われます。
④「チョコまみれ」 マイナスの語感が刺さる
コンビニでクッキーの商品「カントリーマアム チョコまみれ」を見つけたそうです。
・この商品は日経トレンディの選ぶ「2021年ヒット商品ベスト30」の第11位にも入っています。
・動詞の「まみれる」は、辞書では<(血・あせ・どろ・ほこりなど)がいちめんについて表面をおおった状態になる>と説明しています。
・また「まみれ」の項目では「血まみれ」「借金まみれ」などを例示しています。
・悪い語感のことばが、急にいい語感で使われることがあります。「危ない」の意味を表す「やばい」が褒めことばに使われるのも一例です。
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