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No弐-275 「とめ・はね・はらい」を考える5

  さて今日も「とめ・はね・はらい」について考えてみたいと思います。今日が最終回です。

⑬「白」や「自」という漢字の1画目の「ノ」が「日」や「目」と接触する位置は、厳密に決まっているものではなく、点画の接触の位置は漢字の正誤に関わらない。

「丘」「救」「春」「訳」の点画の位置は、漢字の判別に関わらないような違いがないなら誤りであると考えるのは行き過ぎである。

 

⑭「口」「中」のように2画目のすぐ後に下部の横画を書く場合には、縦棒の下に付いて少し外に出るように最後の横画を書き、「日」「田」など2画目の後に別の画を書いてから下部の横画を書く場合には、2画目の終筆より少し上のところに付くように最後の横画を書くとことはあるが、書き分けるかどうかは文字の正誤に関わらない。

 

⑮「就」という字の右側は、一旦横に書いてから下ろす書き方が正しいというのは誤解。本来は軽く接する程度の形で書くもので、正誤の判断を行う際には注意が必要。

「概」「既」「蹴」「沈」「枕」なども同様である。

 

⑯「戸」という字は、明朝体では横画で「戸」の形が一般的だが、手書きでは点で書

くことがある。「帰」のように,縦画を点で書くことのある漢字もある。

「違」「今」「武」「班」「均」も同様である。

 

⑰「才」という漢字を手書きする場合に最終画を縦画と交わらないように書くと、片仮名の「オ」と同じように見える。

「又」という字の最終画をとめて書くと、片仮名の「ヌ」と同じように見える。

「丁」の縦画をはねずに書くと、アルファベットの「T」と同じように見える。

これらは、文字の骨組みに関わる違いではないので、どちらの書き方をしても誤りとは言えないが、読む側に配慮した書き方が必要な場合もある。

 

⑱「冒」の「日」と「目」の幅を上下逆に書いたら、その漢字としての骨組みを読み取ることができず、他の漢字と見間違えるような場合は誤りと言える。

 

 さて、いかがだったでしょう?これらの漢字の指導や評価で、現場が混乱しているという情報は、私の耳に入ってきませんが、このことは十分知って、理解した上で漢字指導に当たらないと、信頼関係を損ねないと思いました。

 

 文科省の学習指導要領ではこう書いています。

★小学校学習指導要領解説国語編

 字体は骨組みであるため、ある一つの字体も、実際に書かれて具体的な字形となってあらわれたときには、その形は一定ではない。同じ文字として認識される範囲で、無数の形状を持ち得ることになる。

 児童の書く文字を評価する場合には、こうした考え方を参考にして、正しい字体であることを前提とした上で、柔軟に評価することが望ましい。

 一方、漢字の学習と書写の学習とを考えたとき、文字を書く能力を学習や生活に役立てるために、文字を正しく整えて書くことができるよう、指導の場面や状況に応じて一定の字形を元に学習や評価が行われる場合もある。

 指導に当たっては、字体についての考え方を十分理解した上で、生涯にわたる漢字学習の基礎を培うとともに、将来の社会生活において漢字を円滑に運用できる能力を身に付けていくことができるよう配慮することが重要である。

 

「柔軟に評価すること」が望ましく、「一定の字形を元に学習や評価が行われる場合もある」って、どうするの?と思いませんか?さらに漢検も調べてみると

 

★漢検

 漢検では、その文字特有の骨組み(字体)が読み取れ、誰が見てもその字であると判断できれば、漢字の細部のとめ、はね、はらいなどの書き方によって不正解とすることはありません。

 このような考え方は、内閣告示「常用漢字表」(平成22年)の「(付)字体についての解説」や文化審議会国語分科会報告「常用漢字表の字体・字形に関する指針」などの公的資料に示されており、漢検もこの考え方に沿って採点をしています。

 しかしながら、どのような書き方をしてもよいということではありません。別の字、あるいは別の字の一部分のように見えたり、骨組みが読み取れないほど字が崩れたりしている場合は、不正解となることがあります。

 漢字を学習する際、迷われる場合は、教科書体(小学校の教科書で使われる、手書き文字に近い形の書体)をお手本にされることをおすすめいたします。

漢字の「正しい形」は一つではありません。字体が同じ字と考えられる字は、全て正解とします。字体が違う字と考えられる字は、不正解とします。

 

 朝日新聞朝刊の南雲ゆりかさん(国語教室主催)の話の中に「社会のテストで陸奥宗光の「宗」の一番したがはねていなかったらバツにされたという話もありました」と書いてありましたが、私ならバツにはしません。では、すべてひらがなで書いたらどうしますか?

 評価基準を明確に伝えておけばよいと思います。ひらがなで書いた時は△(3点)、「陸奥宗満」漢字の一部間違いは△(3点)、「陸奥義光」名字や名前の間違いは×(0点)というように。

 

・実際の入試でどこまで細かく見られるのかは推測するしかありません。「とめ・はね・はらいまで見る」「画数のバランスの乱れは不正解」などと方針を明らかにしている学校もあります。学校には入試の採点基準を、具体例を挙げて示してほしいと思います。

 私も同感です。ゆるすぎてもすべての家庭から歓迎はされないと思います。小学校の時期に身に付けておきたいこと、鍛えておきたいことはたくさんあります。大人になっても基礎・基盤として残るからです。

 入試だけでなく、指導方針、評価基準をもっと明確にしておくべきです。

 国民みんな知っているのがベストですが、できないならせめて、学校の中で共通理解しておいた方がいいですね。

 冬休み中に確認しておいてはいかがでしょう。