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No弐-256  言葉のおもしろさ16

 朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は10月30日から11月20日の4回分です。

 

①「フユ柿」 寒くなる季節に食べる柿?(10月30日)

 青果店の店先に見た値札に<甘い甘い フユ柿 400円>と書いてあったそうです。

・<フユ柿>は「富有柿(ふゆうがき)>のことじゃないかなと思って写真を撮りました。「う」が抜けています。

・寒くなる季節に<フユ柿>はよく似合っている。お店の人は「冬」をイメージしてこう書いたのでは。

・よく使われてくることばは、だんだん変形してくるものです。「体育」を「たいく」、「絆創膏」を「ばんそうこ」と言ったりしますね。

・もうそこまで冬が来た、その季節に食べる柿というイメージがやっぱりあると思うのです。

 

②「急行」 超高層ビルで使われる?(11月6日)

 渋谷の超高層ビルのエレべーターの表示に<急行>と書いてあったそうです。

・高層階まで一気に行と言う意味のようです。

・辞書にはもう一つの「急行」も載っています。「現場に急行する」など、「急いで行くこと」の意味です。

・ある分野に特に多く使われることばは、辞書でも特別に説明しておく必要があります。

「至急」がそうです。普通よりも急ぐ電報のことを「至急電報」と言ったのです。それで、この意味の「至急」を特に説明している辞書もあります。

 

③「さし石」 「さす」の意味もいろいろ(11月13日)

 佃島を散歩中、神社で奇妙な石を見かけたそうです。<佃 さし石>と書いてありました。

・「さす」ための石らしいのですが「さす」って何だろう。針を刺す、傘を差す…。

・インターネットで調べると中央区のウエブサイトが出てきました。

・昔、佃島の若者が力比べに使ったのが「さし石」。つまり力石です。持ち上げることを「さす」「あげる」と言ったそうです。「差し上げる」の「差す」なんですね。

・明治以降も東京では持ち上げることを「差す」と言ったのでしょう。いつから言わなくなったかは分かりません。

 

④「ラーメンラリー」 テニスでも自転車でもなく(11月20日)

 地下鉄のポスターに<ラーメンラリー> 開催中のポスターがあったそうです。

・「ラリー」の意味は国語辞典にはありません。

・辞書で「ラリー」を引くと、テニスなどでボールを打ち合う意味や、自動車レースの意味が載っています。

・このラリーは「スタンプラリー」のこと。1970~80年代に一般化しました。自動車のラリーを元に名づけられたものと考えられます。

・この「スタンプラリー」が略されて、再び「ラリー」となり、種々のイベント名が生まれています。カレーラリー、クイズラリー、温泉ラリーなど。