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No弐-252 ちいちゃんのかげおくりエピソード

  11月29日(月)朝日新聞朝刊に「ちいちゃんのかげおくり」と作者のあまんきみこさんのことが載っていました。

 たしか光村の3年生の教科書だったかな。今もあるのかしら?懐かしいと思い、今日は紹介したくなりました。

★かげおくり

・ちいちゃんは、出征するお父さんから「かげおくり」の遊びをこんな風に教えてもらいます。

「とお、かぞえるあいだ、かげぼうしを じっと見つめるのさ。

 とお、といったら、空を 見上げる。

 すると、かげぼうしが そっくり 空に うつってみえる」

 

★あまんきみこさんとかげおくり

・私は旧満州生まれ(1931年)で、のろまな子でした。

・唯一お友達と気後れせずに遊べたのが、かげおくり。

・病弱だったので、お布団に横になっている時は、窓から見える空をながめては、かげぼうしを反芻したり、ファンタジーの世界に飛んで行ったりしていました。

 

★「ちいちゃんのかげぼうし」ができるまで

・40歳になる前に「車のいろは空のいろ」でデビューしました。その少し前から、かげおくりをテーマに何か書きたいと思い始めました。

・当初は、ちいちゃんのお母さんのなみこちゃんから始まり、ちいちゃんは戦争を生き残って恋もして、せんこちゃんのお母さんになる3代の女性のかげおくりの話にするつもりでした。

・でも何回書き直しても、ちいちゃんが死んでしまう。

・戦争の実相は大切な人の未来を奪うこと。ちいちゃんにどうしても生きてほしいのですが、生かすことはうそを書くことになってしまう。

・葛藤しながら、書いてはしばらく置くことを繰り返し、結局完成したのは50代。難産でした。(1982年、あかね書房、累計48万部)

 

★あまんきみこさんと戦争

・捨てたいと思っていることも、みんな抱えて人は生きているー。40歳を過ぎてからこう感じるようになりました。

・木の年輪みたいに、経験したこと全てを、内側に持っている。

・私の年輪のひとつに、戦争の哀しみや痛み、何も知らなかった悔いがずっとある。

・だから、大切な人や暮らしを奪われる哀しさを書かずにはいられないのだと思いますね。

・今を生きる子どもたちに、戦争は絶対にだめなんだということが、ひとしずくでも伝わってほしい。それが願いです。