11月13日(土)朝日新聞朝刊の「論の芽」は「女言葉だわ 男言葉だぜ」でした。
No弐-182(9月15日)で「役割語」を取り上げました。
・特に性差が強調されるため、翻訳業界では最近、役割語の用い方が議論になっている。
・映画、小説、演劇などのフィクションのほか、外国人のインタビューの翻訳などでも多用される。
・海外の人名になじみがないことから、小説などでは人物像をつかみやすくするために「~だわ」「~なのよ」といった女性語が強調されてきた。
・「英語では標準的な表現なのに、女性語に翻訳するのはおかしいのではないか」と言う意見が、読者や通訳者から上がっている。
「女言葉」の歴史を中村桃子教授(関東学院大・言語学者)が紹介していました。
★「女言葉」の歴史
・いま、私たちが「女言葉」として認識している「だわ」「のよ」といった言葉づかいの起源は、明治時代の女学生の話し言葉。
・当時は正しい日本語とは扱われず「良妻賢母に似合わない」「下品で乱れた言葉」だと、さんざん非難されていた。
・女言葉が正当な日本語に位置付けられたのは、朝鮮半島や台湾などの植民地でとられた同化政策の中のことで「女と男で異なる言葉遣いをする」のが日本語のすばらしさであるとされ、多様な言葉づかいの一部だけを「女言葉として語る」ことで概念が生み出された。
・戦後、日本のプライドを取り戻すために、女言葉はさらに称賛されるようになる。
・「女学生のはやり言葉」だったはずが、起源をねつ造され、「山の手の中流以上の良家のお嬢さまの言葉」だったと喧伝(けんでん)されるようになる。
・日本女性は丁寧で控えめで、上品だという「女らしさ」と結びつけられ、「女ならば女言葉を使うはずだ」と言う意識も生まれた。
・戦後、大量に輸入されるようになった海外の映画や小説の翻訳に女言葉が盛んに使われ、定着していった。
・翻訳の世界で女言葉が使われることで「女は女らしいはずだ」という幻想が、海外の女性に対しても押し付けられ、「女らしさ」が世界共通であるかのような意識を生んでいった。
・女性が、幻想を作り出す男女の境界線を飛び越えると「女のくせに」と非難される状況も生んだ。
・女言葉に「女らしさの押しつけ」ではなく、女性をエンパワーする役割を見出せる日が来るかもしれない。
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