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No弐-209 交ぜ書き1  

    急に寒くなりましたね。今日と明日はまた漢字に注目してみようと思います。

 少し古い記事になりましたが、8月17日(火)の朝日新聞朝刊「オピニオン&フォーラム 論の芽」は「常用漢字と私たち」でした。「交ぜ書き」という言葉に馴染みはありますか?

 「最近よく見る「まん延防止等重点措置」や「医療ひっ迫」-。常用漢字でない字にひらがなを使うのを不自然と感じている人は多いようです」という内容でした。

 

★常用漢字とは?

・常用漢字は、現在2136字あります。

・常用漢字の定義は「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字目安」。

・有識者でつくる国の文化審議会国語審議会分科会で審議し、決まります。

・あくまで「目安」なので、守らなければならない規則ではありません。

・学習指導要領では、義務教育を終えるまでに、だいたいの常用漢字が読め、書くことにも慣れることが求められています。

 

★交ぜ書きの問題

・「まん延」は「蔓延」、「ひっ迫」は「逼迫」、「あん馬」は「鞍馬」と書けますが、「蔓」「逼」「鞍」は常用漢字でないため、常用漢字だけを使うならひらがなと交ざります。

・交ぜ書きの読みにくさは、作家や学者らから再三指摘されてきました。

・交ぜ書きが議論になるのは、新聞やテレビ、ネットで交ぜ書きが散見されることも一因の要です。

・報道で使う漢字はおおむね常用漢字に基づいていますが、厳密には100%依拠しているわけではありません。

・新聞・通信・放送局が加盟する日本新聞協会には各社の校閲担当者らが集まり、記事の言葉選び・表記の原則を決める「新聞用語懇談会」があり、常用漢字ではないが記事では使えるとする字を例外的に決めています。各メディアはここでの議論をベースに自社で使える漢字を決めます。

 

★新聞用語懇談会委員を20年務めた時田昌さん(産経新聞元校閲部長)の話

・産経新聞はマスコミでは珍しく「蔓延(まんえん)」「改竄(かいざん)」と読み仮名(ルビ)付きで漢字表記している。漢字で書く熟語は全て漢字で表すのが自然と考えるため。

・「双璧」なども2010年に「璧」が常用漢字に入る前から交ぜ書きをやめ、漢字ルビ付き。「双壁」と誤って書かれやすいが、「壁のようにそびえている」わけではなく、「すぐれている」と言う意味の「玉」を含む「璧」が正しい。表意性のある漢字は意味を正しく伝えやすい利点がある。

 

・新聞用語懇談会の場で交ぜ書きの議論が活発になったのは1990年代。北朝鮮の日本人「ら致」(拉致)、金融機関の経営危機で「破たん」(破綻)、「損失補てん」(補填)がニュースに頻繁に出ていた頃。

・「拉」「破」「填」は2010年の改定で追加されるまで常用漢字ではなく、交ぜ書きが頻出していた。

・「日本人ら致」などは、「日本人ら」と別の言葉に読めてしまう。

・改善を求める声が上がり、96年、特に読みにくい「拉致」や「だ捕」(拿捕)は交ぜ書きをやめ、ルビ付きで漢字にするといった動きがあった。

・それでもまだ多くの交ぜ書きが残り、報道各社は交ぜ書をさらに減らす総論では一致したものの、どういう規準で減らすかを巡って意見が割れた。

 

・02年に特別の検討部会を設け、1年余り議論した末、報道で使っていた300余りの交ぜ書き約70まで減らした。 

 いかがでしたか?交ぜ書きへの関心は少し高まりましたか?明日に続く