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No弐-203 相対時間の普及

 10月13日(水)の読売新聞朝刊「ニュースの門」は「『あと○分』生活のあちこちに」でした。

 「最近、私たちの身の周りでは、時間の表し方を「○時○分」ではなく、「あと○分」「○分前」とする動きがじわじわ広がっている」というのですが、お気づきでしたか?

 

★日本人の時間感覚

・「注文した木材が約束の日時に届かない」「正月のあいさつ回りに丸2日費やす」

 江戸末期、長崎に滞在した外国人技術者が残した日記には日本人のルーズさを嘆く言葉が並ぶ。

・理由は当時の時間感覚にあった。時間の最小単位は今の2時間分で、時間帯や季節で伸び縮みした。鶏の鳴き声や寺の鐘で漠然と測るしかなかった。

 

・「時間に正確」という日本のイメージ形成のきっかけになったのが、1972年に開業した鉄道だ。定時運行を守るため、24時間制を導入。

・時刻表を定め、発車5分前に駅にいない客は乗せない徹底ぶりだった。

 

★鉄道の時刻表示の変化

・JR東日本は2年前、山手線で駅ホームにある列車の発車案内表示を「○時○分」から「(列車到着は)約○分語」に変更。

・地下鉄銀座線も2018年に改め、大阪・御堂筋線も今年度以降の導入を検討中。

 

★絶対時刻と相対時間

・「絶対時刻」は、誰から見ても同じ「○時○分」、「相対時間」は、見る人次第で変わる時間表示「○分前」。

・変更は乗客の要望に応えたもの。あと何分で列車が来るのかを知りたい人が多い。

 

・「相対時間」は日常に溶け込んでいる。

・テーマパークの人気アトラクションや行列のできる飲食店で見かける。

「ただ今の待ち時間○分」「ご案内まで○分」

 

・SNSやニュースサイトへの投稿 「○分前」「○時間」「昨日」と表示。

・相手に行動を促す効果。

・ツイッターは投稿の日時を秒単位で示す。投稿という「会話」にライブ感を与え、リツイート(転載)などを活性化させるねらい

 

・防災面での活用 津波到達まで『8分』」と訴える動画の作成(鎌倉市)

 

・「利用者の目線に変換された時間なので直感的でわかりやすい。時間の見通しを把握できれば、その間に他のこともできる。忙しい現代人の時間管理に役立つ」(一川真教授・千葉大・時間学)

 

★コロナ禍で時間の捉え方の変化

◎時間の使い方で困っていること(セイコー時間白書2021)

・他人がどんな時間で生活しているかわからない(46%)

・生活のメリハリがはっきりしない(42%)

・時間を効果的に使うことが難しい(41%)

・「在宅勤務やウェブ会議に浸透で公私の時間の境目がなくなった上、同じ空間で他人と何かに取り組む時間が減り、不安を感じる人が増えている。

 自分の時間は自分で決めるという当たり前のことがますます大切になるだろう」(井上毅館長・明石市立天文科学館)

 

★腕時計離れ

・携帯電話やスマホの台頭を受け、出荷数はこの10年で3割強減った。

・腕時計は電車通勤のサラリーマンが増えたことで急速に普及。1977年には製造数が約4490万個とほぼ全世帯に行き渡った。

・90年後半の携帯電話の登場で販売不振、2010年代前半のスマホが追い打ちをかけたが、09年のリーマンショック後、高級化路線と訪日客需要で持ち直す。

・15年以降スマートウオッチに脅かされ、コロナ禍での外出控え、訪日客の消失などが逆風となった。

・機械式時計の有名ブランドはスマートウオッチ市場に相次いで参入。