朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は9月4日から9月25日の4回分です。
①「富士山麗」 「麗」の字が似合う商品(9月4日)
家電量販店にあったウオーターサーバーの広告に<富士山麗のおいしい冷水がすぐに出る>と書いてあったそうです。これ「富士山麓」のことですよね。
・たしかに水の商品名には「麗」がよく似合うのです。
・「麗水」「麗しずく」などの名前のミネラルウオーターもあります。発泡酒には「淡麗」というのもあります。
・漢字の誤読から新語ができることもあります。独り舞台のことを「独擅(せん)場」と言います。「独擅」は思いのままに振る舞うこと。
・これが「どくだんじょう」と読まれ、「独壇場」の表記が生まれました。独りで活躍するイメージもあり、今では普通に使われています。
たしかに「麓」と「麗」は似てますよね。
②「刺・焼・煮」 3文字でひと組みの略語(9月11日)
居酒屋の貼り紙に<豊洲から朝一仕入れの鮮魚です!刺・焼・煮お申し付けください>と書いてあったそうです。これは「さし・やき・に」と読むのでしょう。
・刺身と焼き魚、煮魚らしい。これを3文字の略語で表現するのを初めて見ました。「刺・焼・煮」と3つの調理法を並べるのは新鮮でした。
・「揚(あげ)」など別の調理法を加える場合もありあります。
・3文字でひと組みになった略語は時々目にします。
「心・技・体」(相撲など)、「運・鈍・根」幸運・粘り強さ・根気(成功するコツ)、「安・近・短」(近場への小旅行)「体・徳・知」(教育目標)など
*「鈍」と「純」を間違えました。失礼しました。③「目に云う」 どなたが使い始めたのか(9月18日)
立ち飲み居酒屋の掲示板に「本日の目に云う」と書いてあったそうです。
・「目に云う」は「メニュー」のこと。つまり「当て字」ですが、この当て字は、あちこちの店で使われているらしいのです。
・使用例は全国に広がっています。「目に言う」「目に云う」でインターネットを検索すると北海道から沖縄まで例が出てきます。
・使用例はもっと以前からあります。1968年のPR雑誌の名前に「目に言う」があります。
・宮沢賢治の詩に「眼にて云ふ」があり、なんだか似ています。ただ、この詩は死ぬ間際に人のつぶやきを記したものです。
「今日の目に云う」と黒板に書いたら子どもたちはどんな反応するでしょうね?
④「アホ毛」こんなことばも美容用語に(9月25日)
岡山県倉敷市のバス停の看板に<ひと塗りで、ハネない アホ毛の瞬間セーブ>と書いてあったそうです。
・乱れた髪をまとめるための、ブラシ付きスタイリング剤の広告です。
・「アホ毛」は、一部がはねたり縮れたりして、まとまらない髪の毛を言います。
・ドライヤーをかけてもちっともいうことを聞かない、「アホな毛」というわけです。
・若者ことばとしては、すでに約30年も前から使われていました。
・もともとは、関西などで広まったことばでしたが、今や全国的に使われています。
・どの会社も使っている「美容用語」です。
・美容のことばは当然、イメージを大切にします。「うるさらボディケア」「つるすべ美肌」など、美を連想させる表現が次々に生まれます。
・そんな中で「アホ」ということばは異彩を放ちます。
「アホ毛」って何だと思う?尋ねてみたくなりますね。
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