皆さんは「役割語」と言うのを聞いたことがありますか?
9月23日(木)朝日新聞「教育」欄の「明日へのlesson」に「キャラ印象づける『役割語』」、「『千と千尋』セリフが作る世界観」という見出しが目に留まりました。
・金水敏教授(大阪大学大学院文学研究科)は、特定の人物像と結びついた特徴ある言葉遣いを「役割語」と名付けた。
・3年前から「ジブリアニメのキャラクターと言語」と題した講義を始め、毎回200人以上の学生が受講している。
・講義では「風の谷のナウシカ」や「魔女の宅急便」など宮崎駿監督が手掛けた6つのジブリアニメを扱い、セリフを分析する。
・「ジブリでは、役割語が特にうまくストーリーを引きたてている」
★「千と千尋の神隠し」
◎湯婆婆(湯屋の経営主の魔女) 「~かね」「~おくれ」などの「おばあさん語」を多用する。
◎ハク(千尋を助ける少年で川の神様) 「そなた」と言った「神様語」を話すことで、時間を超越した特別な存在感を出している。
◎リン(千尋の先輩で湯屋で働く少女) 「メシだよ」「~かよ」など、男性語を話す。
「強い少女像を際立たせるために、あえてジェンダー観をずらした役割語が使われている」
◎千尋(主人公の10歳の少女) 「特徴がないことが特徴」
・ヒーローやヒロインは、視聴者が自分自身と重ね合わせ、共感できるようにするために、標準語を話すことが多い。
・金水教授は、20年ほど前、「いる」「おる」「ある」などの「存在表現」を研究していた。
・「鉄腕アトム」のお茶の水博士が「わしはアトムの親がわりになっとるわい!」など、「おる」の表現を使っていることに気付いた。
・江戸時代、京都で学問を学んだ医者や学者は言葉遣いに保守的で、上方風の話し方をしていたが、それが誇張されて戯作や歌舞伎に描かれ、現在まで受け継がれていったのだと分析した。
・その人物「らしさ」に当てはめた表現であり、現実とも異なる場合が多い役割語は、言語上のステレオタイプだ。
・特に性差が強調されるため、翻訳業界では最近、役割語の用い方が議論になっている。
・映画、小説、演劇などのフィクションのほか、外国人のインタビューの翻訳などでも多用される。
・海外の人名になじみがないことから、小説などでは人物像をつかみやすくするために「~だわ」「~なのよ」といった女性語が強調されてきた。
・「英語では標準的な表現なのに、女性語に翻訳するのはおかしいのではないか」と言う意見が、読者や通訳者から上がっている。
・役割語に注目することで、映画などのフィクションの世界では、作り手の意図やキャラクターの魅力に気付くことができる。
国語の授業で登場人物の話し方(役割語)に注目させてみても面白いかもしれませんね。
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