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No弐-144  コールドゲーム

 昨日の甲子園で行われている第103回全国高校野球選手権大会。5日目の第1試合の大阪桐蔭VS東海大菅生(西東京)は、大阪桐蔭が7-4で8回表1死降雨コールド勝ちしたニュースを見て、心が痛みました。

 天候だから仕方のないことです。ルールだから仕方のないことです。しかし、関係者の熱意で8回表一死からの再試合ができなかったのでしょうか? 

 

 今日のスポーツニッポンに阿久悠さんの詩が載っていたので紹介します。

・甲子園大会の過去のコールドでは、88年の1回戦で高田(岩手)が雨に泣いた。

 8回裏の滝川二(兵庫)の攻撃中に雨が激しくなり、11分間の中断の末、降雨コールド。3-9で敗れた。

79年から06年まで本誌に「甲子園の詩」と題した詩を掲載していた阿久悠氏は「コールドゲーム」というタイトルで「高田高校ナインは甲子園に一イニングの貸しがある」と9回まで戦うことができなかった無念を記した。

 

★「コールドゲーム」 阿久悠

まるで波がひいた瞬間の渚の砂のように 鈍く銀色に光るグラウンド

マウンドはすでに泥濘で 投手のスパイクは足首まで埋まる

一投一投にポケットのロージンにふれ 雨滴のしみこんだ白球に

意志を伝えながら いや 願いをこめながら投手は投げる

雨――甲子園は激しい雨

悲願の晴舞台は イメージに描いた

カッと照る太陽や 灼ける土や のしかかる入道雲や 幻覚を誘う陽炎ではなく

ただひたすら 自らとの戦いを強いる激しい雨

黙々と耐え 胸の中に炎をかき立てるしかない

初陣高田高の 夢にまで見た甲子園は

ユニホームを重くする雨と 足にからみつく泥と 白く煙るスコアボードと

そして あと一回を残した無念と 挫けなかった心の自負と

でも やっぱり 甲子園はそこにあったという思いと 多くのものをしみこませて終った

高田高の諸君 きみたちは

甲子園に一イニングの貸しがある そして 青空と太陽の貸しもある

 

 その後高田高校は、東日本大震災の大津波で壊滅的な被害を受けますが、昨年この詩の一節を刻んだ石碑が新校舎に移設され、復活を遂げたんだそうです。

 阿久悠さんが生きていれば、昨日の試合を見てどんな詩を書いたでしょうね?

「甲子園に一イニングの貸しがある」、「青空と太陽の貸しもある」

 心に残る言葉になりました。さすがです。