朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は4月3日から24日までの4回分です。
4月3日「左縦書き」倒置法の文章と思いきや
車道に面した自転車駐輪場に<設定を! 暗証番号 盗難多発! 自転車>という張り紙があったそうです。実は左縦書きだったのです。
・昔から右縦書きするのが当たり前でした。当たり前すぎて、左縦書きを禁じる規則もありません。
・右縦書きにすると、(右利きの人の場合は)書いた文字が手で隠れてしまいます。
・昔は巻物に書いたため、左手で巻物を広げたりまいたりするほうが簡単だった、それで右縦書きになったといわれます。
世界的に見ると、左縦書きにするのはモンゴル文字くらいで、右縦書きも少数になりつつあり、それは中国や韓国では横書きが主流になっているからで、いまや縦書き自体が珍しいんだそうです。
4月10日「ご馳走ビール」量は値段とは関係なく
ビアレストランの窓に<○○(店名)のご馳走ビール>と書いてあったそうです。
4月17日「焙じたて」読めなくてもおいしそう
駅ホームの自動販売機に<しあわせ香る 焙じたての香り>と書いた広告を見つけたそうです。読めましたか?
・「焙じたて」は辞書にない、珍しい言葉です。漢字も学校で習わない字。
・「焙(ほう)」の字は「あぶる」とも読みます。「焙煎(ばいせん)」という熟語で分かる通り、豆や茶葉などあぶって水分を飛ばすのが「焙」。
・ほうじ茶葉、茶葉をほうろくなどに入れて、あぶって作ります。香ばしくでき上がったばかりの状態を「焙じたて」というのでしょう。
4月24日「火酒」クイズは成立しそうにない
居酒屋の入り口に酒のメニュー<麦酒 日本酒 焼酎 火酒>と貼ってあったそうです。
・最後の「火酒」は何でしょう。近づいてよく見ると「WHISKEY」と書き添えてあります。ウイスキーでした。
・西洋の酒を漢字で書く例
シャンパン「三鞭(さんべん)酒」、アブサン「茴香酒」、ラム「糖精酒」
アブサンってご存知でしたか?ヨーロッパの薬草系のリキュールだそうです。
・「火酒」はウイスキー、ブランデー、ウオッカなどいろいろな酒の名を表す。
芥川龍之介「山鴫(やましぎ)」の中で<火酒(ウオッカ)と鯡(にしん)の尻尾です>のように使っています。
「火酒」の読み方は複数あるので、クイズにならないということでした。
辞書には、ご馳走は、「心を込めてもてなすこと。特に食事などをふるまうこと」と書いてあります。
・量や値段とは関係なく、ちょっと贅沢な気分になれるところが「ごちそう」なんですね。
・こういう「ごちそう」は最近よく目にします。「ごちそうサラダ」「ごちそうスープ」もあります。
・サイドメニューを「ごちそう」と形容するのは新しい感覚です。
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