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No972 言葉のおもしろさ7

  朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は2月号、6日から27日までの4回分です。 

 

2月6日「檸檬」なぜクレーンに果物の名?

 東京駅八重洲口のビル工事現場のクレーンの台の部分に「檸檬」と書いた大きなシートが、他のクレーンにも「葡萄」「林檎」のシートが貼ってあったそうです。しかも達筆な毛筆で、果物イラストも。

 工務店の広報部に聞くと、それぞれの果物の名前はクレーンの愛称で、考案者も文字の揮毫者も女性だということが分かりました。高いところのクレーンは「春・夏・秋・冬」。

「名前で仕事場を明るくするという素晴らしいアイデアです。番号よりも果物名の方が間違いが少ないというメリットもあるでしょう。通行人の関心も引き、一石何鳥にもなるネーミングです。」なるほど、そうですね。

 

2月13日「サステナブル」いつも間にか消えた「ィ」

 散歩途中に入ったカフェの注文用タッチパネルに<サステナブル>の文字が表示されていたそうです。

 「サステナブル」は、「持続可能」で、資源を取りすぎないなど持続的な環境や社会に役立つことだそうですが、私は初めて聞きました。

 「たとえば「サステナブルコーヒー」は環境や人々の生活に配慮して作ったコーヒー」

 「sustainableつまり「サステイン」(持続)できるという意味なので、「ィ」があった方がいい。ところが、ことばが広まると、形が変化しました。「ティ」は言いにくいんです。」たしかに。

 

2月20日「晴れと水」商品名に「と」は珍しい

 <晴れと水>というミネラルウオーターがあるんだそうです。飯間さんは、青空と湧き水を対比的に示す助詞の「と」が気になりました。

 「と」を使う商品名は珍しいというのです。商品名に一番多い助詞は「の」だそうです。「六甲のおいしい水」「日本の天然水」

 「「の」は商品名に使いやすい反面、あまり頼ると個性が乏しくなります。そこで採用されたのが「と」だったのかもしれません。」

 「日本語の助詞には、ほかにも「が」「を」「に」など多くの種類があります。」助詞に注目しても面白いですね。

 

2月27日「おくら」大元は西アフリカのことば

 中学の教科書で野菜のオクラを「おくら」とひらがなで書いてあったそうです。

 「オクラは英語okuraから来ています。さらに大元をたどれば西アフリカの言葉だと英英辞典にある。ならばひらがな表記は間違っている」ことになりますが、飯間さんは「オクラは日本語化していると捉えていい」と言っています。

 ひらがな表記の外来語には、じゃがいも、かぼちゃ、いくらなど

 ちなみにオクラは漢字で書くと「陸蓮根」だそうです。