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No886  言葉のおもしろさ4  

 朝日新聞終末別冊版「be」に連載している飯間浩明さんの「私のB級言葉図鑑」からです。今回は11月号、7日から28日までの4回分です。 

 

11月7日「戻ってこれた」 会話体では「ら抜き」定着

 ビルの壁面のACジャパンの広告に<僕は再びこの場所に戻ってこれた>と書いてあったそうです。白血病から復帰したサッカーJ2の早川史哉選手がドナー登録と呼びかけた広告でした。

・教科書的には「こられた」となるところですが、会話体の「これた」の方が選手の肉声という感じがします。

・「食べられる」を「食べれる」、「こられる」を「これる」と言うのは、いわゆる「ら抜きことば」です。

・この形は、特に戦後になって批判が強まりましたが、20世紀になる頃、永井荷歌の小説の会話に「来れる」が現れています。

・昭和以降の文学にも「ら抜き」は多く見られます。各地の方言でも使われてきました。

・現在、テレビで話す一般人の言葉が「ら抜き」が主流です。 

 

11月14日「肉だく」 「大量」を表す新しい接尾語

 牛丼店の壁面に<肉だく牛カレー>の広告を見たそうです。

・牛肉が従来の1.5倍入っていることを「肉だく」と表現しています。

・20世紀末、牛丼の「つゆ多め」を表す「つゆ多め」を表す「つゆだく」が一般化しました。「だく」は「たくさん」の略でしょうね。

・今回、「○○盛り」ではなく、」「○○だく」の形を使ったのは新味があります。

11月21日「喫煙可能店」 かつての「普通」に新名称

 街を歩いていると<喫煙可能店>などの表示をよく見かけるようになったそうです。皆さんは見たことありますか?

・かつては、タバコが吸える店が普通で、禁煙の店は「禁煙店」とわざわざ強調してお客を呼んでいました。

・以前から普通にあったものを新しいものと区別するために改めてつけ直すことがあります。「レトロニㇺ」と言います。

 

11月28日「君は彼方」 「あちら」と読む人いるかな

 アニメ「君の彼方」の映画ポスターを見てタイトルの読み方に迷ったそうです。

・万葉集」には「かなた」以外に「をちかた」の読み方が出てきます。

 「彼方野辺(をちかたのへ)」向こうの野辺などと使われました。

・尾崎紅葉「金色夜叉」を見ると、一番多い読みが「あなた」で、その次に「あちら」。この作品では、「かなた」の例は少数です。

・「日本国語大辞典」第2版には、「あがた」「あち」など、全部で13ありました。