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No786 名前を呼ばない文化

 8月18日(火)朝日新聞朝刊「文化・文芸」の「人と間 コロナ禍の距離 ②名前」からです。「『感染死者1』あなたは誰」という見出しに目が留まりました。

 

・日本では一部の有名人を除き、新型コロナウイルスで犠牲になった1千人超の名前は明かされない。

 一方、米国では5月、ニューヨーク・タイムズ紙がコロナによる犠牲者1千人の名前を1面から書き連ねた。

 失われたのは数字の「1」ではなく、それぞれの名前を持った人間であったのだという事実が重く響く。

 この違いには全く気が付きませんでした。

 

・古来、名前には特別な力があると信じられてきた。

 グリム童話の「ルンペンシュティルツヒェン」では、こびとの名前を言い当てることで赤ん坊を差し出す契約を無効にできた。

 豪州の先住民は、自分たちの本当の名を悪霊に知られないようにささやき声で呼び交わした。

 平安時代の女性は父や夫、子の名前を用いて呼ばれた。

 

・「あえて名前を呼ばない文化」が日本では今でも息づく。(畑中さん・民俗学者)

 例えば上司や同僚を「部長」「先輩」、配偶者を「お母さん」「パパ」と役割名で、親戚を「大阪のおっちゃん」と地名で呼ぶ。

 

・実名を明かすことは、「忌み名」的な抵抗感を生むにとどまらず、不特定多数からの悪意、攻撃を受ける危険性をもたらすおそれがある。

 忌み名とは聞き慣れない言葉ですね。調べてみると「日本では古来より、人の名前には通り名と忌み名の二通りあって、通常は通り名を使用し、忌み名は公には明かされず、信頼できる近しい人たちにのみ知らされていた。親子しか知らないし、又、他人に知らせてはならないルールがありました。」と書いてありました。

 

・現代人は自らの名前をどのように扱っているのか(折田准教授・関東学院大・情報社会学)

 特に若い人の中で「名乗り分け」が進んでいる。使う人の名前に応じて言葉遣いや振る舞いを変えることで自分自身の見せ方をうまくコントロールしている。

 女子高生の7割近くがSNSなど「裏アカウント」を持っているそうです。