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No654 涙の卒業式  

4月5日(日)の朝日新聞朝刊の「窓」からです。「一緒に卒業したよ」という見出しでした。

 一人のお母さんが娘の代わりに卒業証書を受け取った話です。

 2年半前に高校1年生の次女が野球部のマネージャーとして自転車で朝練に向かう途中トラックにはねられ、亡くなりました。

 

 卒業式当日、教室の娘さんの机には花と写真が供えられていた。教室は、ちょっとした興奮に包まれていた。担任に名前を呼ばれた生徒が机の間を進む。仲間から冗談交じりの合いの手が飛ぶ中、照れ笑いを浮かべたり歓声をあげたりして、一人、また一人と卒業証書を手にしていく。

 

 女子で50音順の最後の子が証書を手に窓際の席に戻ると、拍手が鳴りやんだ。

 一呼吸おいて、担任の良く通る声で娘の名前が呼ばれた。

 「はい」と立ち上がり、前だけを見て、教壇の脇に進んだ。

 

 卒業証書が読み上げられる。大柄な担任が目を抑えているのが見え、慌てて目をそらした。涙のしずくが上からポロポロと落ちてきて、床を濡らした。

「こんなに思っていてくれたんだ」こらえきれず手で顔を覆った。

 

 差し出された証書に手をかける。これで娘も高校生活を終えられる。みんなと一緒の教室で。

「ありがとうございました」。声が震えた。でも自然に笑顔となった。耳が痛くなるほどの拍手が起きた。

 

 卒業文集を開いたのは、帰宅後のことだった。最後のページは空白。ただ、下の方に数行あった。娘さんへの追悼の意を込めたと書いてある。

<彼女に恥じない生き方をしましょう 担任より>

 また涙が止まらなかった。

 

 この卒業式の場面が甦ってきませんか?最近日本アカデミー賞を受賞した「新聞記者」を観て以来、時々記者の名前にも目がいくようになりました。この記者の思いがよく伝わりました。

 皆さんなら、どんなメッセージを書きますか?