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No411 壬生義士伝

 昨日は、東京宝塚劇場で雪組「壬生義士伝」を観てきました。感動して泣いているお客さんがたくさんいました。女性の客の多さ、役者の歌と演技のうまさはもちろんなのですが、この原作、脚本、演出が魅力的だからだと思います。

 原作は、浅田次郎さん。「鉄道員(ぽっぽや)」で直木賞を受賞した人気作家です。

 この『壬生義士伝』は、2002年、渡辺謙主演でテレビドラマ化され、翌年2003年中井貴一主演で映画化され、日本アカデミー賞も受賞しています。

 

 主人公は、東北・南部盛岡藩の下級藩士、吉村貫一郎。勉学に優れ、北辰一刀流の免許皆伝の腕前で、藩校の師範を務める逸材ながら、身分が低いために生活が苦しく、愛する家族を養う為に脱藩し、新撰組に身を投じます。

 

 新撰組に入ると、無名の存在ながら役職に就きますが、身なりは薄汚く、刀はボロボロで若い隊士からも蔑まれます。藩士時代とは比べ物にならない給金を手にしても、その全てを故郷に暮らす家族に送り届ける姿が、「守銭奴」と馬鹿にされますが、家族への義が貫かれます。

 

    しかし、戦の場では若い隊士を助け、真っ先に切り込む猛者。鳥羽伏見の戦いで決して逃げ回る事なく、敵陣に先頭切って乗り込んでいく姿が武士道としての義が貫かれます。

 

    京都での戦いに敗れ、南部藩は、徹底抗戦を主張する家老によって最後まで幕府への義を貫きます。家老の大野次郎右衛門は吉村の幼馴染みで、京都の戦いで瀕死の重傷を負いながらも生きながらえた吉村に脱藩の罪で切腹を命じます。大野はボロボロの刀では腹も切れないと自分の刀を吉村に渡し、南部の米のおにぎりまで渡します。ここにも友達への義が貫かれます。

 

    吉村は屋敷内で腹を切ります。その部屋の床の間には、小刀と二分金十枚ばかりの包みが置いてあり、傍らの壁には「此弍品拙者家へ……」と記してありました。

 

   長男嘉一郎の親への義にも感動してしまいます。

 

「義」の大切さを問うことで、人の心を打つのでしょう。死語にしたくないですね。