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No297  博士課程の実態

 昨日の朝日新聞朝刊の「気鋭の研究者 努力の果てに」という見出しが目に留まりました。 

 大きな研究成果を上げて、将来を期待されながら命を絶った女性の記事でした。

 

 東北大学で日本思想史を学び、江戸中期の仏教研究で博士号を取得しました。

 日本学術振興会の特別研究員になり、成果をまとめた著書も高く評価され、日本学士院学術奨励賞を受賞するほどの優秀な人だったようです。

 

    しかし、非常勤講師や専門学校のアルバイトでは、経済的にはかなり苦しかったようです。研究職に就くことを望み、20の大学に応募しましたが、全て不採用でした。

    そして、ネットで知り合った男性結婚しますが、半年で破たんしてしまい、翌年2016年の2月に自死しました。43歳でした。なんて気の毒なんでしょう。

 

     新聞の資料が古いので、調べてみますと、平成29年に大学院博士課程に入学した人は14,766人となっています。もっとも入学者数が多かったのは平成15年の18,232人ですので、この14年間で2割近く減少していることになります。

     しかし、大学院博士課程に進学する社会人の割合は、増加していて、4割が医学・歯学系なんだそうです。非社会人、修士課程からそのまま進学してきている学生の減少は著しいそうです。

 

    文系博士課程にいる人は、理系博士課程の人よりも圧倒的に少ないことが分かりました。博士号の取得率が最も高かったのは「医学・歯学などを含む保健」(56.3%)農学(53.3%)、工学(52.8%)、理学(46.3%)と続きますが、社会科学(15.2%)、人文科学(7.1%)とは差があり、文系の博士号の取得率は、理系の1/3以下という結果が出ています。

 

    就職率は、2015年度の文科省の「学校基本調査」では、人文科学では、就職率35.8%、正規就職率20.5%でした。厳しい数字が出ていますね。